研究課題/領域番号 |
16H02226
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
広瀬 直毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70335983)
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研究分担者 |
江淵 直人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10203655)
碓氷 典久 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 主任研究官 (50370333)
木田 新一郎 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (50543229)
磯辺 篤彦 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00281189)
吉川 裕 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40346854)
若松 剛 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球情報基盤センター, 特任主任技術研究員 (20637665)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HFレーダー / ADCP / 海峡通過流 / 熱輸送 / 非構造格子モデル / 形状抵抗 / 乱流混合 |
研究実績の概要 |
過去の潮位観測データ、海洋レーダ観測データ、ADCPデータ等を収集・整理した。3海峡のHFレーダーデータを組み合わせて、対馬・津軽・宗谷海峡の通過流量の季節・経年変動を再現し、そのメカニズムについて議論した。新たに津軽海峡のフェリーADCPデータを入手したが、データ形式が分散しており、フォーマットの統一作業に時間を要している。 対馬海峡および津軽海峡の高解像モデルを作成、数値実験した。HFレーダーやフェリーADCPデータなどとの比較を通じて、良好なモデル結果を確認した。さらに、日本海貯熱量に見られる上昇トレンドと十年規模変動の要因について、海洋長期再解析データセット(FORA-WNP30)を用いて解析した。熱収支解析から、対馬海峡からの熱輸送が貯熱量の長期変動の主要因であり、海面熱フラックスは貯熱量変動に受動的に応答していることが分かった。経年変動を中心に宗谷・対馬・津軽海峡がそれぞれ、西太平洋上のどの海域で強制された波に感度が高くなるのか、検証を開始した。 3海峡を同時に高分解能シミュレーションする非構造格子FVCOMモデルも作成した。MPI並列化によって、海峡部で最小1km~東太平洋で最大200kmメッシュの大規模計算を実現した。感度実験の結果、津軽海峡と宗谷海峡の流量比は、津軽海峡の海底地形の再現性に強く依存することを見出した。形状抵抗の効果が強いとみられる。 海峡モデルの適切なパラメタリゼーションを目指して、熱フラックスの日周変動が引き起こす乱流混合について、LESを用いて数値実験を行った。日周変動がある場合には、無い場合に比べて混合層が低緯度では深化、高緯度では浅化することなど、日周変動の影響は緯度に応じて異なること、その緯度依存性は日周期で生じる対流混合と慣性周期で定まるシアー乱流により決まること、などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特段の問題は発生していない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)観測データ 宗谷海峡と対馬海峡のHFレーダー修復を完了し、H28~29のHFレーダーおよびADCP観測データを収集する。さらに海峡部の流況検証用データとして、係留流速計、漂流ブイ軌跡、水位差等の現場観測データを収集する。前年同様に品質管理を実施する。(検証用データの収集はL江淵,森本,RPD) (2)構造格子モデルとデータ同化 海峡モデル毎に(変分法またはカルマンフィルターを用いて)フル同化を実施。その結果、海峡内外の複雑な風況が逆推定され、局所的な気象変化の影響まで評価する。ある海峡モデルで再現性が向上しない場合は、別の海峡用に開発したモデルを流用して計算精度を確保する。4次元変分法のデータ同化用に作成したアジョイント方程式(時間を遡ってモデル変化を逆算する方程式)を用いて海峡変動の要因を力学的に逆追跡し、原因(境界条件など)と結果(海峡変動)の物理的整合性を確認する。 (3)非構造格子モデルとデータ同化 前年度に作成した有限体積モデル(FVCOM)についても上述の海峡データを同化する(2)の海峡別同化モデル結果と比較し、相互検証(デバッグ)を行う。その結果、同化修正に関わった強制力(海上風や海面熱交換など)の起源をはるか遠方まで遡って特定することができる。
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