研究課題/領域番号 |
16H02230
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平原 聖文 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50242102)
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研究分担者 |
齋藤 義文 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (30260011)
大山 伸一郎 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (20444424)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙プラズマ / 地球大気プラズマ / 直接観測 / 衛星計画 / 波動粒子相互作用 / 中性プラズマ相互作用 / 宇宙地球結合系 / 編隊飛行 |
研究実績の概要 |
宇宙地球結合系直接探査複数衛星計画「FACTORS」の立案・推進のため必要となる150kg級の小型衛星バスシステムの開発検討を実施しつつ、並行して、海外との共同計画推進、具体的には60kg級の超小型衛星の提供に関する準備的な衛星技術、理学意義、観測手法、等の各種の検討を実施した。衛星構造・電力・通信の設計に関して、FACTORS衛星に搭載される様々な理学観測機器の位置と視野の確保と諸元、及び衛星搭載推進系の具体的な仕様・構造・設置を反映させながら、実現可能性を高めたシステムを構築した。 FACTORS用イオン分析器として新規開発中の超熱的イオンエネルギー質量分析器の宇宙実証のため、観測ロケットSS-520-3 搭載モデルを完成させ、ロケット搭載フライトモデルに対するイオンビーム照射試験、紫外線照射試験などの性能試験を行った。その結果、エネルギー分解能、角度分解能、質量分解能とも設計に即した性能を有していることを確認した。また、地球周辺での観測を行う場合に必要となる紫外線除去性能を十分なレベルで有していることを確認した。また、将来の宇宙プラズマイオン計測技術開発として、検出器からのパルス信号処理用の電子基板を改良した。具体的には、粒子検出器の出力信号はそのままでは微弱であるため、通常の電子回路で分析を行うためにはさらなる増倍が必要であり、このための方策として、信号増倍を行うプリアンプ基板を製作した。 FACTORS衛星に搭載する熱圏中性粒子測定器の開発に向けた基礎情報を収集するために、過去の研究成果を調査した。特に、摩擦加熱・ジュール加熱に関する観測研究を重点的に調べた。地上リモート観測データを用いて、オーロラ活動が活発な時の極域電離圏密度の変動の高度依存性と、サブストームが発生した際の熱圏大気の加速に関する解析を行い、誌上論文の発表と学会発表を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SS-520-3号機ロケット実験の実施が遅延しており、宇宙地球結合系直接探査衛星計画「FACTORS」の技術実証に向けた波動粒子相互作用解析装置の宇宙実証が未実施であるため。また、中性粒子分析器開発において必須となる粒子ビームラインの改良に時間・労力を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙地球結合系直接探査複数衛星計画「FACTORS」では、同時に2機以上の150kg級小型衛星を開発する必要があるため、製作・試験のための実施体制を検討する必要がある。また、搭載用イオン分析器に入射したイオンの質量を分析するためのイオン質量分析部の電極形状について設計・試作を行うことが求められているため、次年度はまずは概念設計に着手する予定である。加えて、中性粒子分析器開発においては、中性粒子の速度分布関数を取得するための2次元位置検出機能を有する検出器系の開発・改良を実施する。並行して、海外研究機関(スウェーデン王立宇宙物理学研究所、キルナ市)と協同する事で、衛星搭載用中性粒子分析器開発を推進する。また、イオン分析器のみならず、中性粒子分析器の開発にも粒子ビームラインの改良をする計画である。 地球の電離圏・熱圏に見られる弱電離プラズマにおける力学場・温度場の変動を理解するには、イオンと中性粒子の衝突過程の把握が最も重要である。モデル値から想定される衝突過程では説明できない力学場・温度場の変動が多数観測されている。これらを理解するには、イオンと中性粒子の両方を測定し、衝突過程を議論する必要がある。そこで、スウェーデン・IRFと連携し、衛星機上で両粒子を測定する機器開発を目指し、科学目的の達成に必要な機器性能、測定物理量の情報を提供する。また、地上-衛星同時観測を見据え、広範囲の電離圏・熱圏を地上から測定するための共同観測体制の構築、必要な機器の導入について、アメリカ・GI/UAF、フィンランド・UO, SGO, FMI, LUT、スウェーデン・IRF、ノルウェー・UiTと国際共同研究を進める。
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