研究課題
東部赤道太平洋の国際深海掘削計画(IODP) Site U1335コアから採取されたUチャネル試料、計約55m長について、古地磁気分析を行った。パススルー型超伝導磁力計を用いて、自然残留磁化測定、非履歴性残留磁化(ARM)及び等温残留磁化着磁(IRM)実験、これらの交流消磁実験を行った。主成分解析により古地磁気方位を決定し、過去約800万年間の古地磁気層序を復元することができた。ARM及びIRMで規格化することにより相対古地磁気強度を推定した。古地磁気測定を終えたSite U1335のUチャンネル試料から、ベリリウム同位体分析及び岩石磁気測定のための試料分取を行った。ベリリウム同位体分析は、今年度は予察的測定として、0-3Ma及び6.8-8.4Maの区間の28試料について分析を行った。従来報告のない数Maより古い年代の試料についても、ベリリウム同位体分析から古地磁気強度を推定できる見通しが得られ、この試料の時間解像度は1万年程度と推定された。西部赤道太平洋海域で9~11月に実施されたIODP Expedition 363に、研究分担者の中村が指導する大学院学生の熊谷(研究協力者)が古地磁気専門家として乗船した。船上で半割コアを用いた予察的な古地磁気測定を行い、Site U1490において約9~19Maの古地磁気層序を復元することができた。このコアは、従来ほとんど報告されていないこの年代の高品質な相対地磁気強度データが得られる可能性のある希有な試料と判断され、今後詳細に分析を行うためIODPにサンプル・リクエストを行った。本課題は当初過去約1000万年間の古地磁気変動を対象としていたが、過去約2000万年間に拡張できる見通しが得られた。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載したように、過去2000万年にわたる古地磁気強度、伏角の連続的記録が得られる見通しがついた。ベリリウム同位体分析についても、過去数百万年に適用できる見通しが得られた。従って、おおむね順調に進展していると判断される。
上述のようにIODP Expedition 363において西部赤道太平洋から採取されたSite U1490コアは、過去9~19Maの古地磁気強度変動を記録している可能性が高い。本課題で対象とする年代範囲を2000万年まで拡大する。今年度は、テキサスA&M大学のIODPコア保管施設においてこの区間のU-チャネル試料を採取し、本格的な古地磁気・岩石磁気測定(自然残留磁化、非履歴性残留磁化、これらの段階交流消磁実験など)を開始する。昨年度に古地磁気測定を行った、東部赤道太平洋のIODP Site U1335コア試料については、データの解析、高温・低温磁気測定等の岩石磁気測定による堆積物の磁気的均質性の評価、火山岩による絶対古地磁気強度データベースとの比較・キャリブレーションなどを行う。ベリリウム同位体分析については、昨年度から実施しているSite U1335コア全体の概要分析を完了させるとともに、松山ーブルン地磁気逆転境界付近、ガウス期、及び3.5-4.5 Ma付近について6cm間隔程度の詳細なサンプリングを行い、測定に着手する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Earth Planets Space
巻: 68 ページ: -
10.1186/s40623-016-0561-7