研究課題/領域番号 |
16H02236
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
大河内 直彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 分野長 (00281832)
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研究分担者 |
吉川 知里 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 技術研究員 (40435839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 窒素同位体比 |
研究実績の概要 |
代表者の大河内が中心になって,南極縁辺海で採取された海底堆積物試料(IODP Exp. 318,アデリー海,過去2000年分)のうち約20試料を採取し,その中に含まれるクロロフィルおよびその誘導体を抽出した後,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定性分析を行った。予想通り,クロロフィルa,フェオフィチンa,パイロフェオフィチンaの3種が,堆積物中のクロロフィル誘導体の主たる成分であることが明らかになった。その後,高速液体クロマトグラフィー/分取コレクター・システムを用いて各化合物を単離・精製し(逆相カラムと順相カラムの両者を用いて2回精製),十分量(窒素量にして100 ng以上)が見出された化合物試料について,本研究用に高感度化された元素分析計/同位体質量分析計を用いて窒素同位体比の測定を行った。その結果,クロロフィルaの窒素同位体比について見ると,過去2000年間にわたって-5~-1パーミルの間を振動し,北半球高緯度の温暖期(19世紀後半以降,および中世温暖期)に相対的に高い値を示す一方で,寒冷期(小氷期)に低い値を示すことが明らかになった。このようなクロロフィルの窒素同位体比の時代変動は,表層海水中に溶存している硝酸の窒素同位体比を反映しているものと考えられる。北半球高緯度の気候変動となぜ同期した変動を示すのかを理解するために,現在,分担者の吉川が中心になって,窒素同位体比が組み込まれた生態系モデルをカップリングさせた海洋モデルを構築しつつある。それが出来次第,この変動が再現できるかを試す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,西赤道太平洋の堆積物試料から分析予定だったが,南極縁辺海の堆積物の方が有機物濃度が高く,技術的にハードルが低いと判断したので,後者から分析にとりかかった。分析の順序は入れ替わったものの,分析の進捗は予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の大河内は,さらなる試料として西赤道太平洋で得られた堆積物試料の分析を行い,クロロフィル化合物の窒素同位体比記録をなるべく増やす努力を行う。分担者の吉川は,南極海の堆積物記録がシミュレーション可能なモデルをなるべく早く確立する。 また年度当初に,使用していたHPLCのオートサンプラーが故障したため新しいものを購入しなければならなくなった。ただしこのHPLCは別の予算で購入したものであるためマシンタイムに限りがあり,本研究専用のHPLCを購入することにした。今年度は予算の都合上,HPLCシステムの一部を購入し,来年度に残りの部分を購入することになる。
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