研究課題
本研究は,海洋環境における窒素安定同位体比(15N/14N比)を規定する要因を,観測と海洋生態系を組み込んだ窒素モデルの両面から研究し,その成果を過去の地質時代における海洋の窒素サイクルの変動へ応用するものである。平成30年度は主に,先カンブリア代である11億年前に形成された地層中(アフリカ北西部のモーリタニアで採取)からクロロフィルの分子化石であるポルフィリン(クロロフィルの中心環に由来するテトラピロール化合物)の化学構造と窒素安定同位体比について研究を行った。それらポルフィリン化合物の多くは,明らかにクロロフィル由来であることを示すE環を持っている。また,各ポルフィリンの窒素安定同位体比が+5.6 - +10.2パーミルであることを明らかにした。さらにその結果を,当時の生態系全体の窒素安定同位体比を表すと考えられる堆積物のバルク有機物の窒素同位体比と比較して,生態系内における窒素同位体分別が0.5 - 5.2パーミルの範囲にあることを明らかにした。その結果,食物連鎖による窒素安定同位体比の上昇が比較的低く抑えられていたことが示唆された。このことは,11億年前当時の海洋においては高次捕食者が未だ進化したおらず,現在の海洋に比べて食物連鎖が非常に短かったことによるものと解釈した。この成果はProceedings of the National Academy of Science USA誌に発表した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the National Academy of Science, USA
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