研究課題/領域番号 |
16H02245
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤岡 慎介 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (40372635)
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研究分担者 |
長友 英夫 大阪大学, レーザー科学研究所, 准教授 (10283813)
城崎 知至 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10397680)
山ノ井 航平 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (30722813)
Morace Alessio 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (70724326)
佐野 孝好 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (80362606)
有川 安信 大阪大学, レーザー科学研究所, 講師 (90624255)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レーザー核融合 / 高速点火 / 強磁場 / X線分光 / フレネルゾーンプレート / 高エネルギー密度プラズマ |
研究実績の概要 |
600 Tの外部磁場を印加した状態で,模擬核融合燃料を圧縮し,最大圧縮に達した時刻に,加熱用のペタワットレーザーを照射した.照射によって加熱されたプラズマから放射されるX線スペクトルをX線分光器で観測し,準単色X線画像計測器を用いてX線発光領域を同定した.X線スペクトル計算コードに入力するプラズマの電子温度及び電子密度を変えながら,実験で得られたX線スペクトルを再現する条件を探した.この比較によって,固体密度の10倍に圧縮された領域が,2000万度以上に加熱されていることを明らかにした.加熱された領域のエネルギー密度(圧力)は2 TPaに相当し,米国オメガレーザーで達成されている5 TPaに匹敵するものである.米国オメガレーザーに比べて,1/10のスケールのレーザーで,同程度のエネルギー密度を達成できたという事実は,本研究で原理実証を行っているMagnetized Fast Ignitionの手法が,米国オメガレーザーで研究されている従来方式(中心点火方式)よりも,高い効率でプラズマ加熱が出来ることを証明している.X線スペクトルから,固体密度の10倍以上の領域が加熱されていることが明らかになったが,この事実は準単色X線画像計測器でも確認された.準単色X線検出器の結像系には,フレネルゾーンプレートを用いた.フレネルゾーンプレートは,屈折の代わりに回折を使ってレンズの機能を実現するものであり,観測する光の波長によって焦点距離が変わる.本研究で用いたフレネルゾーンプレートは中心波長4900 eVに対して,+/- 50 eV程度の帯域を持つ設計であり,準単色のX線画像を結像することが可能である.この検出器を用いて,加熱された領域が,圧縮された燃料中に存在することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Magnetized Fast Ignitionの手法を用いて,2 TPaの高エネルギー密度状態を効率的に生成することに成功した.これまでの研究で,Magnetized Fast Ignitionの原理実証に必要な,高密度プラズマの生成,高密度プラズマの高効率加熱,そしてそららを診断する技術の開発に成功している.加熱効率としても8%を達成し,この成果は2018年10月18日の読売新聞朝刊にも掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
Magnetized Fast Ignitionによる加熱過程の,レーザーパラメーターに対するスケーリングを明らかにする.特に,加熱レーザーのパルス幅に対して,加熱温度及び加熱効率がどのように変化するかが重要である.粒子コードによるシミュレーション結果によると,これまで使っていた1 psのパルス幅に対して,10 psのパルス幅を有する加熱レーザーを用いることで,高密度プラズマ中に拡散的に熱が伝わり,高密度領域の温度が2000万度を上回ることが予測されている.この予測の妥当性を実験にて検証することが必要である.加熱レーザーのパルス幅を伸ばすには,レーザーパルスの時間位相制御が必要である.2019年度は,レーザーの発振器に時間位相変調器を導入し,任意のパルス波形の発生を目指して作業を進める.時間位相変調器を導入することで,発振器でのレーザー出力が下がることが危惧されるため,ファイバーアンプの増設を検討している. また,昨年度までの実験では,レーザー駆動キャパシターコイルターゲットを用いて,Magnetized Fast Ignitionの実証に必要な強磁場を発生させた.レーザー核融合によるエネルギー発生を目指す場合,現在の磁場発生方法をエネルギー発生に適用するのは容易ではない.そこで,エネルギー発生に適した手法での強磁場発生法の開発を進める.現在計画しているのは,プラズマ中での抵抗率の空間勾配を使った磁場発生方法である.抵抗率が空間的に勾配を持っていることで,高強度レーザーで加速された電子が駆動する帰還電流の流れ方が変わる.帰還電流の空間分布が磁場を作り,この磁場はレーザー加速電子ビームを抵抗率が高い領域に集める働きを持つ.この手法を用いて,エネルギー発生に適した形態で,Magnetized Fast Ignition法による高効率プラズマ加熱を実現する.
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