研究課題
当該研究計画では、ハイパワーレーザーとX線自由電子レーザー(XFEL)を駆使して、これまで静的圧縮実験によってのみ行われてきた超高圧下の物質のミクロな姿を、サブテラパスカル域まで観察可能にすることを目標に研究を推進した。実験は理化学研究所播磨事業所のXFEL施設SACLA内に独自に展開している高出力レーザーと専用ターゲットチャンバーを用いて行った。当該年度までに、超高速長周期構造生成用のドライブレーザーとXFELを同期させた条件で、結晶石英(クォーツ)や多結晶サファイアなどの標準試料に用いた生成圧力のキャラクタリゼーション、およびX線回折(XRD)イメージングの品質確認を行った。測圧および測温は、時間空間分解の線結像型レーザードップラー速度干渉計と放射輝度温度計を組み合わせた独自のシステムを用いて合わせて行った。これらによりどうプラットフォームにおいて数100万気圧以上の極限状態の生成を再現性良く実現することに成功した。すべり面活性による無拡散形式の相転移が誘起されうるアナログ物質として独自に見出されたタンタルをはじめ、準安定長周期構造の探索を行った。XFELとハイパワーレーザー間の遅延時間を高精度に設定することで、構造変化の時間進展を観察した。独自のXFEL集光系を利用した高スループットXRDイメージングを用いて、長周期構造起因のデバイシェラーリングパターンの時間変化を高S/Nで取得した。大規模分子動力学計算の研究の結果と直接比較検討可能な原子レベルフェムト秒時間分解のデータを取得することに成功した。研究協力者らと共同で既に原理実証しているシンチレーション固体撮像技術を採用したXFELプローブ超解像イメージング系をターゲットチャンバー内に整備開始した。また、同技術において高効率画像再構成処理を可能にするための共焦点レーザー蛍光顕微鏡システムを導入整備した。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度当初計画において予定していた、i) 標準試料を用いた測圧・測温予備実験による数100万気圧生成確認、ii) 結晶石英および多結晶コランダムを用いたXFEL X線回折(XRD)イメージングの較正および評価、iii) フェムト秒時間分解の超高速XRDイメージングによる超高速長周期構造形成の実証とシーケンスの解明、を既に実現している。数100万気圧以上圧力状態の再現性良い生成、広角高精度のX線回折イメージングの実証、といった技術的な成果をあげることに成功した。またそれらを利用して、無拡散タイプの構造変化がピコ秒のタイムスケールで誘起されること、超高歪み速度の弾性圧縮とその後の緩和過程で準安定な新構造が生成しうること、数ナノ秒程度のタイムスケールで圧力温度が準平衡に達し、安定な高圧構造が生成するなど、動的超高圧における構造変化のシーケンスが初めて明らかになってきている。また、シンチレーション固体撮像技術を採用したXFELプローブ超解像イメージング系をターゲットチャンバー内に整備するだけでなく、XFEL集光パターンの撮像や周期構造を有するターゲットの高分解能撮像に成功している。さらには、動的圧縮下の物質において内部を伝播する衝撃波面を可視化するための予備実験にも成功している。超高速X線回折イメージングとの同時観察を念頭にした実験配置の検討にも既に着手している。
理化学研究所播磨事業所のX線自由電子レーザー(XFEL SACLA)施設内に展開している、大阪大学播磨連携センターの高出力レーザーと専用のターゲットチャンバーを用いて実験を行う。XFELをプローブとして、100万気圧超領域の動的超高圧下における長周期構造形成の証拠を得ることを目指して実験を継続して行う。専用ターゲットチャンバーエリアにおいて、超高速XRDイメージングによる超高速長周期構造形成の実証とシーケンスの包括的理解のための実験・研究を実施する。超高速長周期構造生成用のドライブレーザーとXFELを同期させた条件で、金属や半導体の準安定長周期構造の探索を行う。測圧測温は、時間空間分解の線結像型レーザードップラー速度干渉計(Line-VISAR)と放射輝度温度計(SOP)を組み合わせた独自のシステムを用いて合わせて行う。XFELとハイパワーレーザー間の遅延時間を変化させることで、構造変化の時間進展をスキャンする。また、シンチレーション固体撮像技術を採用したXFELプローブ超解像イメージング系の品質の確認を継続して行う。さらに最適な長周期構造生成条件のもとで、実空間におけるXFELプローブ超解像イメージングによる超高圧下構造パターン形成過程解明を目指して、以下の整備と実験を開始する。i)標準試料を用いたXFEL プローブ超解像イメージング予備実験、ii) XFELプローブ超解像イメージングによる超高圧下構造パターン形成過程解明。これにより、フェムト秒時間分解で3次元的な実空間周期構造イメージングの確立を目指す。得られた研究成果を、国内及び国際学会で積極的に発表するとともに、論文としてまとめ国際誌に出版公表する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (47件) (うち国際学会 20件、 招待講演 7件)
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