研究課題/領域番号 |
16H02250
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大西 洋 神戸大学, 理学研究科, 教授 (20213803)
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研究分担者 |
小堀 康博 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (00282038)
立川 貴士 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 准教授 (20432437)
高橋 康史 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (90624841)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 半導体光触媒 / 金属ドーピング / 電子-正孔再結合 / 人工光合成 / 光化学反応 / 金属酸化物 / 電子励起状態 / 電子スピン共鳴 |
研究実績の概要 |
半導体光触媒を用いた人工光合成の量子収率を上げるためにバンドギャップ励起によって生じる電子と正孔の再結合を抑制しなければならない。工藤ら(東京理科大学)はランタノイドまたはアルカリ土類金属元素をドーピングしたタンタル酸ナトリウム(NaTaO3)を用いて非常に高い(50%超)量子効率で水を全分解を達成した。研究代表者らによるこれまでの研究によって、金属ドーピングによって電子-正孔再結合を抑制して高量子収率を実現することが明らかとなっている。ところが一方で、ドーピングした金属カチオンはホスト結晶中の不純物であり電子-正孔再結合を促進しうる。選ばれた金属元素のドーピングが再結合を抑制するメカニズムを解明するために、本年度(次年度への繰越を含む)はX線吸収分光と蛍光エックス線ホログラフィーによるドーピング金属元素の局所構造解析を進展させた。 NaTaO3に固相合成法でドーピングしたSr2+の局所構造をPhoton FactoryにてX線吸収分光法で解析して、ペロブスカイト型結晶格子のAサイト(Na+)とBサイト(Ta5+)の両方をSr2+が置換することを確認し、結合距離を決定した。また、蛍光X線ホログラフィーを適用するためにKTaO3単結晶にCa2+をドープした光触媒モデルを構築し、Ca Kβ蛍光エックス線によるホログラムをSPring-8にて測定した。 さらに時間分解電子スピン共鳴分光によって、SrドーピングしたNaTaO3光触媒をパルス光励起してマイクロ波放出とマイクロ波吸収の組み合わさったスペクトルを得た。吸収スペクトルの線幅が狭く(半値全幅30 Gauss)しかも181 Ta(天然存在比100%)核スピン+7/2に起因する超微細分裂が認められなかったことから、光励起した不対電子は77 KでNaTaO3結晶格子中を熱運動してスピン共鳴信号が平均化されていると推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年7月に光触媒の電子スペクトル共鳴を測定したところ測定ごとにスペクトル形が変化する予想外の現象が現れた。研究遂行上不可欠である変化原因の特定に9月から6ヶ月を要し、電子スピン共鳴の光強度変化測定とドーピング濃度変化測定・エックス線吸収を測定する光触媒の合成・光触媒のエックス線吸収測定と解析・光触媒の専門的知識をもつ海外研究協力者とのうちあわせを29年度に延長した。エックス線吸収分光および蛍光エックス線ホログラフィーによる構造解析、および走査型電気化学顕微鏡と単一分子蛍光顕微鏡の装置改造は計画どおり進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、ドーピングしたランタノイド元素の局所構造をX線吸収分光によって解析するとともに、密度行列をもちいた電子スピン共鳴スペクトルの解析を進展させる。さらに、水分解反応によって生じる酸素分子を溶存状態のまま検出するために走査型電気化学顕微鏡の操作条件を最適化する。
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備考 |
神戸大学理学研究科化学専攻大西研究室(韓国語版) http://www.edu.kobe-u.ac.jp/sci-onishi/index-K.html
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