研究課題/領域番号 |
16H02267
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
陰山 洋 京都大学, 工学研究科, 教授 (40302640)
|
研究分担者 |
山本 隆文 京都大学, 工学研究科, 助教 (80650639)
伊藤 正一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)
小口 多美夫 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (90253054)
松井 敏明 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90378802)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 機能材料 / 層状化合物 / 複合アニオン / インターカレーション / 配位 |
研究実績の概要 |
無機層状化合物は、様々なイオン、分子の脱挿入が可能なことから莫大な研究があるが、層状構造ゆえ元素選択性に乏しかった。代表者らは最近、層状テルル化物Ti2PTe2においてCdなど四面体配位を好む金属のみが「選択的」、かつ「低温」、「固相」で挿入されるという新奇現象を発見した。本研究では、実験と理論の両面からこの特異な挿入反応の起源・機構を解明するとともに、組成、構造、キャリア数などにより選択性の向上と制御を試みる。これにより層状化合物の選択的インターカレーション化学の基礎学理を構築し、将来の新しい元素分離へと繋がる基盤技術を創出する。一昨年度はTiサイトをZrに置換したZr2PTe2について同様の実験を行なったところTi2PTe2とほぼ同様の傾向、すなわち、Zn, Cu, Cdのみが選択的な金属吸収されることが明らかになった。Ti2PTe2では、Fe, Mnが非常に過酷な条件下では若干反応することがわかっていたが、Zr2PTe2ではそのような反応は起こらなかった。この結果より、異常なインターかレーション現象は同構造をもつ物質に一般的になりたつことが明らかになった。また、Zr, Tiでは反応温度が大きく異なることも明らかになった。この性質は適当な物質を選ぶことによって、吸収したい(させたくない)金属を選別できることを意味しており、実際の応用にとっては重要な知見である。これらの性質の鍵になるのはTi, ZrがP3個、Te3個によって配位されているということ(複合アニオン配位)ではないかと考えている。ここで得られた知見を利用して、昨年度は、酸化物における低温アニオン交換反応を促進することに成功した。つまり、アニオン欠陥を意図的に導入することで反応速度および置換量を倍以上に増大させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で得られた知見を利用した低温アニオン交換反応に関する論文は、Inorg. Chem. 56, 13035-13040 (2017).に掲載された。またTi2PTe2に関して反響は大きく、「層状化合物が重金属を選択的に吸収した!」というタイトルの総説が現代化学に出版された。
|
今後の研究の推進方策 |
挿入金属は一種類用いるが、実際の応用を考えると複数の金属元素からの分離(選択吸収)を想定して様々な元素分離実験を行う必要がある。産業廃棄物の中から選択的に有害物質を取り出すことを想定し、混合物や化合物(合金など)とTi2PTe2の反応を検証する。つまり、粉末混合物(単体を混合したものなど)や化合物(合金、複合酸化物など)とTi2PTe2を混合し、真空封入したパイレックス管の中で挿入反応を起こさせる。反応後の試料のX線回折測定SEM-EDS測定により、実際に元素選択的に挿入が起こっているかどうか検証する。Ti2PTe2では空気中でも反応が進行するが、分解等が起こる場合には、特殊雰囲気下での反応を検討する。各温度で空気中、不活性ガス気流中、酸素気流中でTi2PTe2と挿入元素を混合焼成し、挿入状況を調べる。また、挿入した金属を分離する手法を開発する。現在のところ、ZnxTi2PTe2の場合は、I2でZn脱離が可能という予備知見が得られているが、その他の金属についても種々の反応剤(I2やBr2など)を検討する。
|