(I) 共有結合鎖で中性ーイオン性転移を起こす2例目となる一次元磁性鎖を見出した(Adv. Sci.に発表)。この中性ーイオン性転移は、一段階で起こるシンプルなもので(1例目は鎖間クーロン相互作用により2段階で起こった)、今後光励起などの外場による電荷移動制御について研究展開する。また、この化合物はスポンジ磁石の一種であり、結晶溶媒を徐々に放出して単結晶ー単結晶転移を起こし、脱溶媒結晶は中性ーイオン性転移を起こさない中性鎖であることが明らかとなった(溶媒を再び吸着すると元に戻る)。このことは、電荷移動・電子移動には電子ドナーやアクセプターの個々のイオン化ポテンシャルや電子親和力だけでなく、パッキングの影響によるMardelungポテンシャルが極めて重要な役割を果たしていることを実験的に証明している。 (II) 溶媒の脱挿入により磁気相を変換する、いわゆるスポンジ磁石の研究を展開し、二次元層状磁石において、結晶溶媒の脱挿入により層内の電子移動を起こして、磁気転移が70 Kもシフトするスポンジ磁石を見出した。このように、ゲスト分子の脱挿入により格子内で電子移動を誘発し、電子状態や磁気秩序相を変換する化合物は初めての例である(JACSに発表)。東北大学からプレスリリースを行った。 (III) 熱的に電子移動相転移を示す新しい二次元化合物を見出した。また、この化合物はスポンジ磁石として振る舞い、結晶ー結晶転移を起こすことも明らかとなり、今後の展開が楽しみである(ACIEに発表)。 (IV) 昨年度からの継続研究で、酸素を吸着して酸素の電子スピンを介した三次元磁気秩序を起こす多孔性磁石を開発し、論文として発表した(Nat. Commun.に発表)。ガス吸着で磁気相を変換する世界で初めての例であり、東北大学からプレスリリースした。
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