研究課題/領域番号 |
16H02276
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
生越 専介 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30252589)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フッ素 / テトラフルオロエチレン / エッチングガス |
研究実績の概要 |
フッ素化学工業の基幹工業原料であるテトラフルオロエチレン(TFE)は、地球温暖化係数Global Warming Potential (GWP)がほぼゼロであり、工業的にも安価な化合物であるためにTFEを原料とする高付加価値含フッ素化合物の合成は長い間に渡り待ち望まれていた反応であった。平成28年度は、TFEと塩化亜鉛、マグネシウムとの反応により生成するトリフルオロビニル亜鉛化合物(TFV-Zn)の酸化カップリングによるヘキサフルオロブタジエン(HFBD)の効率的なカップリング反応での合成法の構築を検討した。酸化剤として二価の銅塩を検討したところ、塩化銅を用いることでほぼ定量的にHFBDを合成する事に成功した。また、TFEからの二段階での変換効率をさらに向上さえるために、反応条件の見直しを行った。その結果、反応の進行に伴いTFEの圧力が当初の半分に低下した時点で再加圧することでほぼ定量的にTFV-Zn が得られた。これにより、工業的にも十分に利用出来る水準での二段階反応を構築できた。 また、重縮合によるTFEと種々の有機化合物との共重合体に関して検討している過程において、これまで世界中で不可能とされてきた低圧(五気圧)でのTFEの多量化反応が進行することを見いだした。そのためにより優先的にTFEの多量化反応に関する検討を行った。現状では、その分子量や構造は明らかとはなっていないものの反応容器中においては、フルオラス層が生成していることが目視により確認され、NMR測定においてもTFEが取り込まれていると考えられる測定結果が得られた。反応の再現性についても既に複数回にわたり追試を行った。これらの成果はいずれもフッ素産業におけるパラダイムシフトを起こす可能性を十分に秘めたあらたな研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定した以上に、順調に研究を推進することができた。これらの成果は半導体の高分解能エッチングガスとして注目を浴びているヘキサフルオロブタジエン(HFBD)をフッ素化学工業の基幹工業原料であるテトラフルオロエチレン(TFE)から二段階でほぼ定量的に合成する手法を確立したことを意味しており、学術的にも社会的にも極めて価値の高い研究成果を生み出せた。実際に、既存のいかなる方法よりも格段に優れた反応で有り十分に工業的に稼働可能なプロセスである。 さらに低圧でのTFEの多量化反応も見いだしており、これも研究が進むにつれてこれまでの常識を根底から覆す成果となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた研究成果をより発展させる。特にフッ素化学工業の基幹工業原料であるテトラフルオロエチレン(TFE)の重合に関しては大きな研究成果となることが期待される事から、これらに関して注力する。これまでの常識ではTFEの重合体はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、一般には、テフロンとして知られており白色固体の非常に分子量の大きい高分子である。しかし、本重合反応では重合度を制御出来る可能性を秘めており、これが可能となれば世界の常識を覆す研究成果となる。 具体的には、まず基礎的な知見を収集することから始める。前例がないために同定手段、単離手法、評価法など全てが新しいため今年度は以降の研究を効率よく進める基盤作りを行う。同時に知的財産としての保護とその展開戦略に沿っての研究展開を行う。
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