研究実績の概要 |
本研究では、電気化学イメージングのマルチスケール化という新しい概念に基づく計測システムを開発した。本研究で提案するマルチスケール化とは、シグナルと空間分解能に関する複数のスケールを電気化学イメージに組み込むことである。該当年度では、同時に複数の物質を計測できる電気化学デバイスを開発して、シグナルのマルチスケール化に関する研究を実施した。これは、従来の1種類の物質を電気化学イメージングするのとは異なり、多くの情報を取得できる優れた電気化学イメージングであり、細胞機能計測を含めた様々なバイオ計測への応用が可能である。 本研究ではまずデバイスの機能評価を実施した。この結果、開発したデバイス・システムがリアルタイム計測への応用が可能であることを示した(Angew. Chem. Int. Ed., 56, 6818, 2017)。この研究では、微生物の動体観察を電気化学的に計測しており、水質検査などへの応用が可能である。また、測定プログラムの改良やデータ集録ボードの組み換えを行い、1フレームが1 ms以下で取得できる高速化した計測システムを完成させた。高速化での電気計測に関する特性評価は未実施であるため、2018年度に評価する予定である。 また、胚性幹細胞の呼吸活性と分化活性の同時の電気化学イメージングに関する論文を報告した(Anal. Chem., 89, 12778, 2017)。さらに神経様細胞の呼吸活性とドーパミン放出計測の同時計測も達成した。この計測法により、これらの細胞機能の相関性を観察することや、細胞の品質評価が可能である。これらの細胞以外にも、間葉系幹細胞の計測にも成功しており(Electrochim. Acta, 268, 554, 2018)、計測システムの汎用性を示した。センサの局所修飾法の開発に成功しており(Chem. Lett., 47, 204, 2018)、さらに汎用性が高い計測が期待できる。
|