有機カチオン・鉛・ハロゲンから成るペロブスカイト太陽電池の登場以降、真の実用化に向けて有毒な鉛を使わない非鉛ペロブスカイト太陽電池の実現が期待されているが、変換効率は鉛系の1/3~1/4程度に留まっている。重要な課題は電荷輸送層を含めた準位アライメントと非鉛ペロブスカイトの安定性であり、新規材料開発に加えて素子の構造・プロセス・電子物性を総合的に理解する必要があるが、複雑性ゆえ極めて困難である。本課題では、この手法を非鉛ペロブスカイト太陽電池研究へ適用し、新規評価法の開発と圧倒的速度での発電層/電荷輸送層の探索に加え、繊細な材料・プロセスの中に隠れた基礎学理を探求する。 最終年度は鉛(Pb)スズ(Sn)混合ペロブスカイトで初めて見出した「負の実部と巨大な正の虚部」異常誘電応答信号とその発現機構に基づき、光触媒の物性解明および光触媒性能との相関を検討した。チタン酸ストロンチウムは水素発生光触媒として古くから知られているが、そのSr/Ti元素組成比が電子物性にどのように影響しているか不明のままであった。そこで、実虚部分離マイクロ波伝導度測定を行ったところ、Sr/Ti比に応じて電荷トラップに起因する異常誘電応答信号が観測され、その減少と共に光触媒能が向上することを見出した。また、スズペロブスカイトは代表的な非鉛材料であるが、Aサイトカチオン混合が電子物性や太陽電池性能に与える影響は不明であった。そこで、3種類のカチオンを混合したスズペロブスカイトの太陽電池性能、膜物性、マイクロ波伝導度測定を行い、グアニジウムカチオン(GA)比の増減によってペロブスカイトのパッシベーションおよびバルク内への混合が起こり、それに応じて電子移動度と素子性能が増減することを包括的に解明することに成功した。この成果は今後の非鉛材料の性能向上に向けた設計指針として極めて重要である。
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