研究課題
高分子と無機物をハイブリッド化した複合材料(「ナノ複合材料」)は、軽量で高強度という特性を活かし、これまで金属・無機材料しか用いられなかった素材を次々と置き換えつつある。代表者は材料の内部構造をnmスケールで3次元可視化できる「3次元電子顕微鏡法(電子線トモグラフィー)」をナノ複合材料に適用し、その構造解析に成果を挙げてきた。本研究では、試料に引張り変形を加えながら同一視野の3次元像をひずみの関数として連続取得できる電子顕微鏡用「試料延伸トモグラフィーホルダー」を開発し、ナノ複合材料の延伸による3次元構造の変化を初めて3次元可視化することを目指す。さらに、このような動的過程における3次元構造観察結果を計算科学と連携させることで、ナノ複合材料の力学物性発現のメカニズムをナノスケールから解明に繋げてゆく。本研究最終年度である平成30年度は、初年度および第2年度に行った試料延伸トモグラフィーホルダーの開発と最適化を基礎に、ナノ複合材料の延伸過程の「その場」構造観察に取り組んだ。その結果、無機物ナノフィラーの凝集体が延伸によって変形し、高分子(ゴム)とナノフィラー界面でナノボイドが発生する様子(界面剥離)を直接観察することに成功した。また、ナノボイドが凝集体内部で発生する事例も観察され、これは界面剥離とは異なった応力集中メカニズムの存在を示唆する。さらに、ナノ複合材料における亀裂の進展の「その場」観察にも初めて成功し、亀裂先端での応力集中の様子を可視化する解析に取り組んでいる。ただし、このような「その場」観察において、電子線によるゴムへのダメージが予想以上に大きいことも判明した。研究の目的である、延伸下での3次元観察には、電子線ダメージを(照射量を絞ることで)低減することで対応し成功した。現在、計算との比較検討を行っているところである。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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