昨年度までの研究により得られた人工坑体を用い、ACの取り込み挙動を、UV、CD、FLスペクトルを用いて詳細に検討した。さらに抗体に取り込まれたACの蛍光強度・蛍光寿命等を活用し、ACの結合部位・挙動をHSA系の知見と比較し詳細に検討し、基底状態ならびに励起状態における特異的相互作用を明らかとした。 次に人工坑体をキラル反応場とする超分子光不斉反応を検討し、人工坑体非存在下に比較してHead-Tail型生成物であるACD1ならびに2の生成物比の飛躍的な向上が確認された。さらに生成物キラリティーに注目すると、ACD2において約42 %の中程度のeeが得られた。アキラルなACD1を標的リガンドとしている事、さらに人工坑体に取り込まれたAC は約10%程度であることを考慮すると、この値は予想以上に高い値であり、人工坑体を不斉反応場とする超分子不斉光反応の効率よい進行が確認された。 また、積極的な超分子不斉光反応系の反応制御法確立を目指し、ポリエチレングリコ-ル(PEG)や2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマーなどで血清アルブミンや人工坑体の表面修飾を行い、光反応基質取り込みならびに超分子不斉光反応への影響を検討した。具体的にはSAをスカッフォールドとするPEG化不斉反応場の構築には、HSAのリジン残基の1級アミノ基に対するPEG修飾を検討した。合成したPEGHSAのPEG修飾率、高次構造変化、基底ならびに励起状態相互作用、超分子不斉光環化反応による生成物比詳細に検討した。その結果、PEG修飾によりHSAが持つACとの結合サイトの一部がマスク可能であることが示唆され、PEG化HSAを不斉反応場とするACの超分子不斉光環化反応を検討したところ、未修飾HSAよりも効率よい反応場として機能することが明らかとなった。
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