研究課題/領域番号 |
16H02292
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松下 裕秀 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60157302)
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研究分担者 |
高野 敦志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00236241)
野呂 篤史 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (90377896)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素結合 / 3元ブロック共重合体 / Gyroid / ブレンド / 曲率 / ダブルダイヤモンド構造 / TEM |
研究実績の概要 |
1)水素結合可能な高分子成分を各々一つのブロックとする2種の3元共重合体ブレンドからGyroid 表面の創出を試みた。具体的な試料はIS-P(I:polyisoprene, S:polystyrene, P:poly(2-vinylpyridine)) 及びHS-F(H:poly(4-hydroxystyrene), S:polystyrene, F:poly(4-fluorostyrene)) 3元ブロック共重合体である。これらのうちP, H は水素結合をし易く、これらが短い場合に自己集合すると、結合部は大きな結合点の役割を果たし、見かけ上ISF 3元共重合体とみなすことができる。この状態から溶媒処理により水素結合を解離させてHS-Fを取り除くことで、Gyroid 表面を持った構造を構築した。
2)総分子量と中央S ブロック鎖の長さが等しく、両端ブロックの長さが異なる2種類のISP (I:polyisoprene, S:polystyrene, P:poly(2-inylpyridine))3元共重合体をブレンドすることで、二つの分子が単位格子内で局在化する状況を作り出し、表面積の大きさや界面の曲率の変化が大きいために単体では作りえないダブルダイヤモンド構造構築に成功した。3D-TEM を使い、ネットワークミクロドメインが4分岐している様子を明確に捉えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ABC型3成分ブロック共重合体がGyroid 構造を形成しやすい能力を利用し、水素結合可能な高分子成分を取り入れてGyroid表面の創出を目指した。具体的には共通成分としてS:polystyreneを持ち、P:poly(2-vinylpyridine)、F:poly(4-fluorostyrene) を各々の末端に結合させた2種の3元共重合体(IS-P, HS-F)を調製してそれらのブレンドから 1)3相共連続Gyroid 構造の構築、2)水素結合解離によるHS-Fブロック共重合体分子の除去 を実現した。Gyroid構造の構築自体は構想どおりに進んだが、化学的処理によるブロック共重合体の完全除去とナノポーラス構造の安定的維持の難しさもあり、完全に周期的なGyroid表面の創出には至っていないことが課題である。 また、単体ではドメイン形成の自由エネルギーの有利さからダブルジャイロイド構造を構築してしまうISP (I:polyisoprene, S:polystyrene, P:poly(2-inylpyridine))3元共重合体系を対象にして、末端ブロックの長さを大幅に変えた二様ブレンドから、熱力学的な不利を克服してダブルダイヤモンド構造構築を達成したことは、計画の順調な進捗と捕らえている。
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今後の研究の推進方策 |
Gyroid 表面の創出に関しては計画を大幅に変更する必要があると考えた。水素結合の解裂による高分子除去が構想どおりに進まなかったことから、Gyroid 構造を一旦作った後、オゾン分解可能な成分の分解除去による表面創出の方針とした。ここでも、ABC型3成分ブロック共重合体がGyroid 構造を形成しやすい能力を利用する。具体的にはSTIP 4成分4元ブロック共重合体(S:polystyrene, T:poly(4-trimethylsilylstyrene), I:polyisoprene, P:poly(2-inylpyridine)) を対象とする。この共重合体の中央の2成分T, I は、温度を下げると相溶するポリマー同士である。温度操作により、4成分共重合体であるにもかかわらず、低温状態ではS-(T+I)-P のように3相の状態を採るためにGyroid ネットワーク構造を形成するはずで、温度を上げることで4相からのGyroid構造に転移すると考えた。この相分離状態からI 成分をオゾン分解し、続いてP成分を溶媒洗浄すると、ST 成分が残り、T 成分がGyroid 表面として現れるはずである。 また、3元共重合体の成果に学び、2元共重合体からも、ダブルダイヤモンド構造を目指した。後者は共連続構造を極めて作り難いことが知られている。IS (I:polyisoprene, S:polystyrene) 2元共重合体を対象とし、まず単体でラメラ構造、シリンダー構造を作る分子を設計して、これらのブレンド物から分子の局在化による構造構築を目指す。
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