研究実績の概要 |
将来的な水素社会に向けて期待される超高温で高速起動性能を有する発電システムでは,高温度勾配下でかつ高機能な強制的冷却構造を有する超高温回転体が心臓部材となる可能性が高く,従来までは問題にならなかった高温度勾配誘起熱応力への配慮と,その影響を能動的に考慮した高温部材設計指針が求められるようになっている.本研究ではこの類の社会的要求に対し,特に,高温構造材料と遮熱コーティングに関連し,温度勾配誘起熱応力(内部応力)を積極的に考慮した高速熱サイクル誘起破損を最小限に抑え,かつ,寿命を予測する基本指方針を提示する研究を行った.具体的には,材料破損における低サイクル疲労/高サイクル疲労相互作用に加えて,熱疲労と高速熱サイクル誘起フレッティング疲労現象が重畳する現象,ならびに,燃焼振動誘起破損現象に注目し,それらに及ぼすNi基単結晶材の一次及び二次結晶方位,すべり方向,温度,相手側材料の組合せの影響などについて,表面接触状態の変化や動摩擦係数(COF)の変化の調査とともに定量的に調べて,力学的に設計の窓の形で提示した.それと平行し,これまで難題であった表面接触問題に関連するナノレベルの損傷を力学的解析とともに学術的に提示できたことは意義深い.これらの知見を社会展開するため,「化学蓄熱」という新しい概念のエネルギー貯蔵・輸送システムについても研究し,そのための独自装置も自作した.このシステムの適用により,高速の蓄熱と放熱が可能であることを実証できたことは大きな収穫であると同時に,高速熱サイクル誘起破損に関して得られた上述の知見が,化学蓄熱という新規分野においても広く適用できることが示せたことは,低炭素化社会の実現という社会的ニーズに答えるためにも大きな収穫で,今後の研究の新展開にもつながった.
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