研究課題/領域番号 |
16H02305
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
厨川 常元 東北大学, 医工学研究科, 教授 (90170092)
|
研究分担者 |
嶋田 慶太 東北大学, 工学研究科, 助教 (30633383)
水谷 正義 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50398640)
久保 百司 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90241538)
今野 豊彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90260447)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | GaN / CMP / ナノバブル / 量子分子動力学シミュレーション / テープ研磨 / 紫外線援用 / OHラジカル / サブサーフェースダメージ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、窒化ガリウム(GaN)半導体基板の高能率・高品位最終仕上げ研磨加工を実現するために、量子分子動力学法によるGaN基板表面の反応ダイナミクスの解明と、その知見に基づく加工法の提案、並びにそれを実現させるための加工装置を開発することである。 昨年度はテープCMP研磨装置、並びにナノバブルと紫外線を援用したOHラジカルの高濃度発生供給装置を試作し、基本的なGaN表面の反応過程を調べた。その結果、GaN表面数nmが酸化されることにより軟化し、除去作用に有効であることがわかった。しかし発生するナノバブルの粒径が当初予想していた数100nmではなく、100nm以下のものが数多く存在し、しかもその消長過程が研磨能率に大きく影響していることが示唆された。そこで本年度は新たにナノバブル評価装置を導入し、ナノバブルの直径分布、その時間変化、寿命、並びにそれらが研磨能率に与える影響に関して検討した。 さらに昨年度に引き続き、以下の点を検討した。1.Ga原子引き抜き過程の反応ダイナミクス解明と最適砥粒選定。2.OHラジカルの高濃度発生供給とCMP加工装置を用いた研磨実験:加工液として使用する酸素水や過酸化水素水への深紫外線照射する方法、並びに加工液中に酸素のナノバブルを発生、混入しながらの研磨加工実験。3.テープCMP加工シミュレーション:研磨条件を最適化するために、研磨テープやコンタクトホイール(ゴムロール)の弾性変形を考慮し、統計的研削理論を用いて作用砥粒切れ刃密度、仕上面粗さ、研磨抵抗等を計算。4.CMP研磨実験、並びに研磨性能、加工ダメージ評価。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Ga原子引き抜き過程の反応ダイナミクス解明と最適砥粒選定:GaNのCMPプロセスの可視化が可能となり、N原子はC-N結合によって引き抜かれ、酸化した領域のGa原子がC-O-Ga結合によって引き抜かれることが明らかとなった。さらにナノダイヤモンド粒子をGaN表面に2GPaの圧力、10m/sのせん断速度で移動させた場合、効果的にGa原子が引き抜かれることも明らかになった。 2.OHラジカルの高濃度発生供給と加工実験:加工液として使用する酸素水や過酸化水素水への深紫外線照射する方法、並びに加工液中に酸素のナノバブルを発生、混入しながらの研磨加工実験を行った。最初にナノバブルの粒径測定を行ったところ、数nmと90-100nmにピークが存在することがわかった。またその寿命は1時間程度では殆ど変化せず、1ヶ月後も数は減少するものの残存する結果となった。またナノダイヤモンドを種々の加工液に混入し、研磨実験を行った結果、過酸化水素+UV、酸素のナノバブルが最も大きい研磨レートとなった。水のみの加工液の場合と比較し、1.4倍であった。 3.テープCMP加工シミュレーション:研磨条件を最適化するために、研磨テープやコンタクトホイール(ゴムロール)の弾性変形を考慮し、統計的研削理論を用いて作用砥粒切れ刃密度、仕上面粗さ、研磨抵抗等を計算するとともに、実際の加工実験と比較した。 4.CMP研磨実験、並びに研磨性能、加工ダメージ評価:加工ダメージをフォトルミネッセンス法で評価する手法を開発した。その結果、CMPテープのダイヤモンド粒径を小さくするほど、加工ダメージは少なくなった。
|
今後の研究の推進方策 |
ナノバブルの生成過程、またその破砕過程が十分に解明されていないのが現状である。そこでナノバブル崩壊時の様子を、量子分子動力学を用いて可視化することによって、ナノバブル崩壊メカニズムを解明していきたい。 また特に紫外線援用とナノバブル援用とではほぼ同じ加工レートをしましたことから、作業安全性を考慮し、ナノバブル援用を中心に研究を進めていきたい。この場合、ナノバブル崩壊時にOHラジカルが生成され、それによりGaN表面が酸化され、その酸化層がナノダイヤモンドにより除去されていくという加工メカニズムが想定される。したがって、次年度は積極的にナノバブルを破砕させる手法に関して検討し、加工能率の効率化を狙う。崩壊させる方法として超音波照射を用いる予定である。 加工変質層の評価に関しては、のフォトルミネッセンス法による評価、並びに透過電子顕微鏡を用いた断面観察を引き続き行う予定である。
|