研究課題
噴霧冷却は急速冷却技術の本命であるにもかかわらず,特に超高温域(~1000℃)における物理機構は未解明のままである.本研究では,時間領域サーモリフレクタンス法(TDTR 法)の高速性を利用して,表面酸化の影響を考慮しつつ高温域での固液接触の素過程,すなわち動的な濡れと伝熱機構の解明を目指す.これを達成するために,高度に周囲雰囲気を制御した実験系を構築して固体表面の酸化層の成長過程を詳細に把握するとともに,TDTR 法と高速度赤外画像計測により温度および熱流束分布を計測し,熱力学的過熱限界温度を超えた領域における相変化を利用した急速冷却現象の論争に最終決着をつける. 平成28年度は下記の3項目について実施した.(1) 固液接触および動的濡れ観察・・・・・・マイクロジェットディスペンサーで高温面に液滴を射出し,衝突の様子を高速度ビデオをにより観察した.表面処理を行ったいくつのサンプルで実施し,挙動観察を行った.(2) 環境雰囲気制御型噴霧伝熱試験装置の構築・・・・・ 鉄系の材料では表面の酸化皮膜の影響が無視できない.1000℃レベルの温度領域では,実験中に表面が変化するために環境をコントロ ールして酸化の影響を取り除き,酸化の影響を定量的に評価する必要がある.このため環境雰囲気制御型の試験装置の開発に着手した.(3) 表面酸化層の影響評価・・・・・・ 純鉄表面に酸化被膜をコントロールしながら形成し,その熱特性をレーザーフラッシュ装置およびDSC等で測定する手順の構築を行った.これにより熱拡散率および比熱の測定に目途がついた.
2: おおむね順調に進展している
研究開始時にESEMの故障等予期せぬトラブルにより多少の遅れが生じ,研究費の繰り越しを余儀なくされたが,現時点では当初計画道理に順調に進んでいる.雰囲気を制御する伝熱試験装置のシステム構築が完了すれば実験データも順調に収集できる見込みである.
当初設定した研究項目のうち,(3)表面酸化層の影響評価については順調にすすんでおり,高温面の濡れ開始温度と酸化被膜の熱物性の関係が次年度以降で明らかになると期待している.実施予定の項目は以下の通りである.(1) 固液接触および動的濡れ計測(2) 単一衝突液滴の伝熱機構解明(3) 表面酸化層の影響評価
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件)
International Journal of Heat and Mass Transfer
巻: 101 ページ: 1217-1226
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Applied Physics Letters
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