本研究課題では以下の計画を実施した. ①対象細胞への局所刺激を行うため の高性能マイクロハンドの構築(H28-H29). ②高精度長期計測を行うマイクロ・ナノ計測系の構築(H29-H30). ③超高精度力学刺激を印可・計測可能なエンドツールの開発(H28-H29 ). ④細胞・細胞核へのエンドツールを用いた計測・刺激・応答計測と現象解明(H28-H30). 平成30年度は下記に取り組んだ. (1)高精度長期計測を行うマイクロ・ナノ計測系の構築:モデル生物への局所刺激応答計測を行うため,29年度の成果を発展させ高速に運動する線虫を視野中央に捕捉するシステムを実現した(電通大).複数の画像取得系を応用した高精度かつ広作業領域を持つシステムを構築し,計測対象物の高速操作を実現した.(大阪大). (2)超高精度力学刺激を印可・計測可能なエンドツールの開発:口径100nm未満のナノピペットを試作し,ゲート電圧制御でナノ粒子の吐出を実現した(電通大). 板状エンドエフェクタを用いた力学刺激計測系と明視野・蛍光同時観察系を組み合わせ,細胞・細胞核への刺激とその応答の可視化に成功した(大阪大). (3)細胞・細胞核へのエンドツールを用いた計測・刺激・応答計測と現象解明:連続変形刺激を印加する流路を用い,正常細胞とがん細胞を用いた実験を行い,両者の変形能に有意な差があることを見出した.また,2ないし3細胞を固定する流路を用い,カルセインの細胞間伝達の観測を行い,細胞間インタラクションの可視化に成功した(電通大).板状エンドエフェクタを用いた細胞・細胞核への力学刺激応答計測により,細胞核の剛性が高く,複数の細胞内骨格の存在を示唆する結果を得た.また,細胞核刺激用マイクロ流路チップを用いた解析から,核刺激の強弱にともない遺伝子の発現パターンが変化することを明らかにした(大阪大).
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