研究課題/領域番号 |
16H02322
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
福田 敏男 名城大学, 理工学部, 教授 (70156785)
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研究分担者 |
竹内 大 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (20713374)
市川 明彦 名城大学, 理工学部, 准教授 (20377823)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 局所磁場操作 / 3次元細胞構築 / マグネット / マイクロマニピュレーション / 自己組織的組み立て |
研究実績の概要 |
再生医療の発展には,血管構造を有し機能する3次元細胞組織を生体外(in vitro)で作製することが必要不可欠である.そのため,本研究では血管構造を含む3次元細胞組織を作製し,in vitroでの臓器機能の発現を目指している. 本年度は,昨年度構築したマグネットファイバーシステムを用いて,マグネットファイバーをパターン化する技術を確立した.特に,ファイバーのパターニングとフィブリンゲルの固化を繰り返し行うことで,肝小葉と同様な多層のチャネル構造を作製可能であることを実験により確認した.また,ファイバー周囲への細胞の播種については,フィブリンゲル内にラット肝臓細胞を混ぜ,マグネットファイバー周囲に導入することで播種し,細胞の増殖が可能であることを確認した.特に,フィブリンゲルの固化については,トロンビンの量及び固化温度,時間をパラメータとして実験による検討を繰り返し,フィブリンゲル内で細胞が増殖可能となる固化条件を見つけることができた. マグネットファイバーの操作については,肝小葉と同様の6角形形状を作製するために,中心静脈と6つの頂点を構成する7本ずつのマグネットツイザーを上及び下から操作するマグネットツイザーシステムを確立した.また,マグネットツイザー周囲の磁場解析を3次元の有限要素法によって行い,マグネットツイザーに印加する電流値の最適値について知見を得ることができた.この解析手法を用いることで,現在は実際の肝小葉よりも大きなサイズで作製している血管構造について,実サイズに縮小したときに必要となるマグネットツイザーの出力値を推定することが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り,マグネットマイクロファイバーの3次元形状制御についてマグネットツイザーシステムを用いた実験結果を得るとともに,3次元磁場解析を用いてマグネットツイザー周囲に発生する磁場解析を実現した.また,マグネットファイバーの配置とフィブリンゲルの固化を繰り返し行うことにより,多層の3次元的なファイバー構造を作製できることを確認できた.さらに,フィブリンゲルを用いたファイバー周囲への細胞播種を実現し,細胞播種と同時にファイバーの融解が起こり,チャネル構造が作製できていることまで確認することができた.特に,細胞の播種については,フィブリンゲルの固化プロセスにおけるトロンビン濃度及び固化温度を調整することにより,細胞が増殖可能となるフィブリンゲルの作製プロセスを選定することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定通り,マグネットマイクロファイバーの融解によるチャネル構造が3次元的に構築できているかの確認実験を行うと共に,肝臓細胞を播種することで血管構造を有する肝臓組織(肝小葉)の作製を行い,in vitroでの肝機能の評価を行う.特に,現在用いているフィブリンゲルについて,細胞の成長と共に構造を保持しながら分解されていくように分解速度を調整することを行う. また,現在構築しているマグネットツイザーシステムについて,実際の肝臓組織の構成要素である肝小葉と同等の大きさまで縮小することを目指す.このためには,実験システムの構築と共に,3次元磁場解析によるシミュレーション結果を用いることが必要となる.さらに,作製した血管形状の時系変化を評価することで,細胞構造体の長期的な構造・機能保持期間を測定する.以上の結果から,本研究の目的である血管構造を含む3次元細胞組織を作製し,in vitroでの臓器機能発現を目指す.
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