研究課題/領域番号 |
16H02323
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日高 邦彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90181099)
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研究分担者 |
熊田 亜紀子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20313009)
松岡 成居 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10114646)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気機器工学 / SF6代替ガス / CF3Iガス / 管路ガス絶縁送電線路 |
研究実績の概要 |
電気絶縁ガスとして広く用いられているSF6(六フッ化イオウ)ガスは地球温暖化に与える影響が大きく、使用量の削減が求められている。SF6代替ガスとして、高い絶縁性能を持ち地球温暖化係数が小さいCF3I(ヨウ化トリフルオロメタン)ガスを有効活用すべく、10年間の基礎研究および電力機器への適用可能性の検討を経て、実用化の第一歩となる管路ガス絶縁送電線路のプロトタイプ作成を世界に先駆けて行うことを目指している。 GIL の問題点として、コンパクト化を目指す際に使用電界を大きくすると導体の表面粗さや金属異物により絶縁信頼性が充分でなくなることがあり、これは絶縁被覆を中心導体に施すことで改善できる可能性がある。そこでCF3I 混合ガスを用いた新設66 級GIL の検討を進め、66kV 級の固体絶縁とガス絶縁によるハイブリッドガス絶縁送電線路(H-GIL) に対する検討を行った。具体的には、CF3I 混合ガスを適用した際の径方向における概念設計を、CF3I 混合ガスの絶縁特性、伝熱特性をはじめとする様々な観点から行った。まず混合ガスの混合比としては、平等電界破壊電界(SF6に匹敵するガス圧)、不平等電界における破壊電界低下率、沿面電界における破壊電界低下率、液化温度を考慮した結果、CF3I20%、窒素もしくはCO280%の混合比を用いるのがよいという結論に達したこれらの混合比を用いた場合、H-GILサイズは検討したすべてのガス圧に対し同条件のGILよりもシース径が小さくなり小型化できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、中心導体に被覆を施さないGILを想定していたが、絶縁被覆を中心導体に施したハイブリッドスタイルとするほうが、絶縁的には有利であることから、CF3I混合ガスを用いた新設66kV級GILの検討を進め、66kV級の固体絶縁とガス絶縁によるハイブリッドガス絶縁送電線路(H-GIL) に対する検討を行った。 CF3I 混合ガスを適用した際の径方向における概念設計を、絶縁特性、伝熱特性の観点から行っ結果、H-GIL サイズは検討したすべてのガス圧に対し同条件のGILよりもシース径が小さくなり小型化できる可能性が示唆された。 さらに、(H-)GILの敷設性を考慮し、外部導体をコルゲート管にしたフレキシブル化の検討を開始し、コルゲート化に伴った電界の変歪が絶縁性能に与える影響は小さいことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた知見に基づき、フレキシブルなH-GILの試作を行う。 中心導体としては、被覆つき撚り線を用い、外管路としては可撓コルゲートパイプを用いる。中心導体及び被覆としては、電力用ケーブルの外側被覆を剥がしたもの(XLPE/LDPE付き撚り線)のほか、可撓撚り線にシリコンゴム被覆を施したものを現段階では想定している。中心導体を支持するスペーサの形状や寸法などについては、かなり慎重に検討する必要があり、必要に応じてスペーサ単体の試作および絶縁性能評価を繰り返し行い、最終的に管路に組み込めるようにする必要がある。更に、管路の伝熱特性も計算して最終的な設計を行い、それに基づき、GILモデルを製作する。 製作したフレキシブルGILモデルを種々の曲率半径で曲げながら、直流、交流、インパルス、急峻方形波に対する絶縁性能(耐電圧、絶縁破壊電圧、V-t特性)を測定し、交流GILおよび直流GILとしての適用可能性を評価する。 最終的に、CF3Iガスを利用したフレキシブルGILの実用化に向けた開発指針の提言および本研究全体の総括を行いたい。
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