研究課題/領域番号 |
16H02328
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
清水 敏久 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30254155)
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研究分担者 |
和田 圭二 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (00326018)
福本 聡 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50247590)
多氣 昌生 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60145670)
酒井 和哉 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (80730746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パワーエレクトロニクス / 通信ネットワーク / 電磁環境 |
研究実績の概要 |
研究2年度は、昨年度の研究成果を踏まえてパワエレクトロニクス機器に接続あるいは近接する通信ネットワークのノイズ誤動作の解決手法を開発した。具体的成果を下記に示す。(1)CAN伝送線上に誘起されるノイズ波形とパケット損失との関係の明確化 パワエレ回路からCAN伝送線上に誘起されるノイズ波形の再現性が極めて低いことが明らかとなった。そこで、新たにチョッパ回路を用いたノイズ印加装置を開発し、CAN信号線に誘起される電磁ノイズ波形の再現性を高くする事に成功した。この装置を用いて、誘起したノイズとCAN通信の通信エラーの定量的関係性について分析を行った。その結果、チョッパ回路のパワーデバイスのスイッチング直後の高周波振動がCAN伝送波形のパルスデータをサンプリングするパルスセンターのタイミングと重複する場合にパケット損失確率が最も高くなることを確認した。 (2)パケット損失の防止方法の検討 CANの伝送信号パルス信号を検出し、チョッパ回路のスイッチングタイミングがCANパルスのセンターと一致しないように制御する手法を考案した。検証装置を製作し、実験を行ったところ、パケット損失が50%以上発生するようなチョッパ回路の運転状態においても、パケット損失はほぼ0%に低減できることを確認した。 (3)パケット損失発生時の信号伝送プロトコルの開発 通常の信号伝送プロトコルでは、パケット損失時には自動再送命令(ARQ)によって破損フレームを訂正するが、パケット損失が度重なる場合には通信停止措置がとられて故障状態となってしまう。これを避けるために、本研究では、インバータのスイッチング事前情報信号をCAN送受信装置に伝送し、パケット損失の可能性の高い期間は一時的に通信待機状態とする手法を考案した。次年度はこれを実現する通信プロトコルコードを開発し、実験措置を用いて検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展している。 すなわち、パワエレ機器で代表的なチョッパ回路から放射される伝導性電磁ノイズを定量的に把握する手法の開発は概ね予定通り進展し、また、チョッパ回路から放射される電磁ノイズがCAN通信線路に誘起される様態を再現性良く把握できるようになった。研究開始当初はCAN通信線に誘起されるノイズ電圧が、測定日毎に異なるなど、再現性の良い実験が出来なかった。そこで、CAN信号線とチョッパ回路の物理的位置関係を安定に保つ治具を新たに開発し上記問題を解決した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題は順調に進展しているので、概ね当初の研究計画に沿って研究を進める予定である。すなわち、最終年度は、パワエレ回路に起因する電磁ノイズがCAN通信線に誘導された場合でも、CAN通信線の通信障害を最小限に抑制する、あるいはほぼ完全に抑制する手法の開発を行う。その手段としては、CAN通信の信号パルスタイミングとパワエレ回路のスイッチングタイミングを調整することで通信エラーを最小限に抑制する手法を開発するとともに、万が一CAN通信エラーが生じた場合でも、即座にその回復を行う通信プロトコルを開発し、極めて信頼性の高いシステムを構築するための基盤技術を開発する。 また、今回の実験装置は再現性の高いノイズ波形を得る目的で、パワエレ回路から放出するディファレンシャルモードノイズをノイズ源としてノイズ誤動作対策を検討したが、もう一つのノイズモードであるコモンモードノイズに対しても、上記開発技術が有効に機能するかについても検討を行う。これまでと異なるノイズ干渉が発生する可能性もあるので、その場合はコモンモードノイズ等価回路を構築してCAN通信線路へのノイズ干渉とパケット損失抑制方法を開発する。さらに、複数台のパワエレ回路とCAN通信ケーブルが存在する場合について、開発した手法が有効であるかを検討すると共に、実験装置を製作してその有効性を検証する。
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