研究課題/領域番号 |
16H02331
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳥海 明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50323530)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電子デバイス / 半導体物性 / ゲルマニウム / 酸化機構 / 同位体 |
研究実績の概要 |
現在の情報通信技術の基本を構成しているSi CMOS集積回路において見られるように,半導体の酸化プロセスの理解と制御は決定的に重要である。Si技術の先を狙うSiGe,Ge技術においてはさおさらこの事が求められる。しかしながら,デバイス技術が先行するあまりにこの基本技術が不明瞭のまま技術開発が進められている。そこで本研究を計画しH28年度から開始した。具体的な結果の新規性・重要性に関しては,11の進捗状況において記すことにし,ここでは全体像を述べる。酸化過程は基本的には酸素分子が半導体基板と化学反応することによって形成される。Si,Ge,SiGeの場合,どれも反応の自由エネルギー変化は負であり,熱力学的には酸化物が自動的に形成される。Siの場合には酸化過程は大変良く調べられており Deal-Grove則という形でモデル化されてきた。また実験結果もそのことを指示している。Geの場合にも表面的にはSiの場合に似た形でGeO2が形成されていくので同じことが起きていると世界中のほとんど研究者が疑いなく考えてきた。我々はその部分に疑いをもち,初年度に11で述べるように直接的にその違いを示す結果を得ることができた。またSiGeの酸化では,上記で述べた反応の自由エネルギー変化がSiとGeとは異なることによって,Siの方が安定な酸化膜が形成されGeはサブオキサイドができやすいことになってしまう。そこでSiGeからSiO2を選択的に酸化させる技術が実際上重要になってくるがその指導原理がない。H28年度はSiの選択酸化が起きた時のGeの振る舞いを詳細に調べ,明確な結果を得ることができた。本研究ではSiGeデバイスを作成すると言うことを目的としてはいないが,そのもっとも基本であるSiGeの酸化過程に決定的な結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H28年度は研究開始初年度であったが,実験的にきわめて大きな一歩を踏む出すことができた。Geの酸化機構に関しては,以下の二つの発見があった。(1)Geの酸化機構はDeal-Grove機構ではまったく説明できない。(2)酸化時の酸素圧力が高いと酸化レートが落ちることがある。この2点は研究課題であるGe酸化機構を決める上で決定的に重要な役割を果たすはずである。(1)に関しては,酸素同位体を用いた酸化実験によって明らかになったものであり,(2)の結果は実際の酸素圧力を100気圧以上まであげて,酸化膜の成長を測定することから決めた結果である。いずれも実験的に直接的に得た結果であり,また世界初の実験結果である。 一方で,SiGeの酸化に関しては,Siの酸化,Geの酸化とはまったく異なる振る舞いを示す。つまり通常の酸化を行うと,SiO2もGeO2も形成されることは容易に想像されるが,実際のゲートスタックを形成するという観点からは好ましくないことがわかってきた。これは両者が存在すると,SiO2がGeO2よりも熱力学的に安定であることから,GeO2が還元されてしまい非飽和GeOxが形成されてしまうことから生ずる。そこで,SiGe上にSiO2を選択的に形成するための酸化手法を探るための研究を進めており,この場合は低圧酸素下における酸化がこれを実現させることがわかってきた。ただこの場合,Siだけが酸化されるとGeはどこかで消費されるか析出しなくてはならなくなる。このGeの行方がようやくわかってきた。 以上の二点は本研究の中で核をなすものであり,初年度の成果として予想以上のものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記で述べた実験結果をさらに詳細に調べるとともに,その解析的なモデル化を行う。Deal-Grove則がそうであったように,解析モデルはプロセスの理解と制御に関して決定的に重要な役割を果たす。Geの場合にはGeO2中の酸素空孔の動きに着目することが重要であると現在は目論んでおり,酸素分子(あるいは原子)と空孔の反応をどう扱うかを原理的に考えてゆく。また,Siでもそうであったが極薄膜領域では酸化機構が少し異なってくる可能性は十分あり,その場合にはGe表面が酸素雰囲気下でどのように変化していくか原子間力顕微鏡(AFM)を用いて調べて行く。その場合に我々はすでにGe表面を原子レベルで平坦にする技術を持っているので,平坦性の維持,変化は世界初の結果を提供できるはずである。 SiGeの酸化に関しては,実際に低圧酸素酸化をどのように達成するかという手段を考えなくてはならない。ゲートスタック形成においては,単純に酸素圧力を下げてしまうと酸化膜質の低下が見込まれるので,モデル化と現実的な達成方向の両立を考えていく。つまり,SiGeの場合には,選択酸化の結果としての良好なゲート界面特性を実現することがきわめて重要であるので,酸化と界面特性の関係の明確化まですすめる予定である。
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