現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AlGaN系量子井戸構造における点欠陥の抑制を目指して,in-situプロセスとして,MOVPE法で(0001)面上に作製する際の条件(成長圧力やV/III比)が,点欠陥の形成に与える影響を検討した.成長圧力を従来の76 Torrから200 Torr程度にし,さらにV/III比を高くすることにより,室温でのキャリア再結合寿命が数10 psから数100 psに長寿命化することがわかった.室温での再結合寿命は,現状では,非輻射再結合過程を反映していることから,それの長寿命化は,非輻射過程の抑制を示している.一方,ex-situプロセスとしては,Alイオンインプランテーション(および高温熱処理によるダメージ回復)を試みた.インプランテーション後には,もともとも観察できなかった自由励起子に起因した発光が観察されるようになり,Al空孔の低減が示唆された.以上のように,非輻射過程を抑制するいくつかの方法が明らかになりつつある. 一方,線欠陥の低減を目指し,Alと窒素ガスを原料とする,新しいAlNの結晶成長を試みた.これまでに成長速度18 μm/時を達成しており,これは従来よく用いられるハイドライドVPE法と同レベルの速度であった.また,貫通転位密度は,サファイア基板上に作製したAlNとしては,これまでの報告の中でも最小レベルにあり,線欠陥の抑制に向けて有望な方法であると考えられる. 本研究で得られた成果により,29th ICDS (Matsue, Japan, July, 2017),10th IWBNS (Espoo, Finland, Sep. 2017), IWUMD2017 (Fukuoka, Japan, Nov. 2017)にて招待講演を行うなど,対外的にも広く認められている.
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