研究課題/領域番号 |
16H02333
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浜屋 宏平 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90401281)
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研究分担者 |
大岩 顕 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (10321902)
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 教授 (90409376)
斉藤 好昭 株式会社東芝研究開発センター, その他部局等, その他 (80393859) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電気・電子材料 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
研究代表者が世界で初めて実証している薄膜成長技術と高効率スピン注入技術を融合し、これまで実現されたことのない『純スピン流伝導の光・電界制御素子』の創製に挑戦する。以下に、本年度に得られた研究成果を示す。 n-Ge(電子濃度~10^19 cm-3)及びp-Ge(正孔濃度~10^18 cm-3)を伝導チャネルとした横型スピンバルブ素子構造を作製し、強磁性ホイスラー合金からのスピン注入を行うことで、非局所スピン信号の観測を試みた。n-Geの場合は8 Kで数mΩ、p-Geの場合は30 Kで0.1mΩ程度の非局所スピン信号を観測することに成功し、n-Ge層及びp-Ge層を純スピン流が伝導したという証拠を得た。これらのスピン信号の温度依存性を調査したところ、温度の上昇に伴ってスピン信号強度は減衰する傾向を示した。得られたスピン信号強度と一次元拡散モデルを用いた解析から、120 K以下の低温領域では、n-Geにおいてはスピン緩和時間に温度依存性がほとんど見られず、p-Geではスピン緩和時間が1桁以上減少する傾向を明らかにした。縮退系Geにおける電子スピンの緩和は、ドーピングした不純物元素の作るポテンシャルの影響で短距離スピン散乱が支配的となり、温度依存性が非常に小さいことが最近の理論で提案されており、実験結果はそれを支持するものであった。一方、正孔スピン緩和時間は、最近の光学的手法の発展により情報が得られ始めており、本研究で得られたスピン緩和時間の温度依存性は光学的手法から明らかにされている結果と概ね一致した。 以上を考慮して素子構造を設計し、n-Geにおいては世界で初めてGe電子デバイス構造における室温スピン伝導を実証し、p-Geにおいては電気的手法を用いて室温スピン伝導の観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績でも述べたように、n型およびp型Geの両方で電気的手法を用いて室温における純スピン流伝導の観測に成功し、Ge中でのスピン緩和機構の詳細な理解ができた。デバイス応用を進めていく上で解決していかなければならない課題も明らかにすることができたので、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終目標とする純スピン流伝導の光・電界制御を実証するため、先ずは、現有のナノ微細加工技術を利用して、光照射やゲート電圧を印加することができる素子構造の作製プロセスを開発する。その後、それを用いてGe層の電気抵抗率を変調し、その結果、スピン抵抗が変調されることを実証する。
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