研究課題/領域番号 |
16H02334
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木須 隆暢 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (00221911)
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研究分担者 |
井上 昌睦 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (80346824)
東川 甲平 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40599651)
鈴木 匠 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (70756238)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高温超伝導線材 / 臨界電流 / 電流輸送特性 / 欠陥検出 / マルチスケール / 磁気顕微鏡 / 電流測定 / 非破壊・非接触 |
研究実績の概要 |
高温超伝導テープ線材の臨界電流Icの面内分布を長尺に亘り二次元的に、非破壊・非接触に計測する高速磁気顕微手法を確立すると共に、高磁界下での計測、超低電界領域を含む電界ー電流密度(E-J)特性の測定、長尺線材の電流輸送特性のモデリングへと展開し、さらに以上の知見をもとに磁化損失の低減と信頼性の向上を可能とする新たな細線化導体構造を提案するなど、順調に進捗している。本年度の主な成果は次の通りである。 (1)2次元Ic分布計測の高速化:線速76 m/hの評価速度を実現すると共に、500 m長Bi-2223線材の測定によりその性能を実証した。 (2)リール式Ic連続測定の高磁界、温度可変測定:最大5 Tの外部磁界下において77~65 Kの温度特性の評価を実現した。 (3)人工ピン導入線材のIcのバラツキ抑制への貢献:線材メーカとの協力によって、磁界下のIc分布測定の結果を作製条件へとフィードバックし、人工ピンを導入した高均一高性能線材のプロセス開発に貢献した。 (4)高温超伝導線材の広電界領域に亘るE-J特性の計測と電流輸送特性のモデリング:RE-123線材およびBi-2223線材を対象として、磁化法と四端子法を複合的に用いることで10^-10~10^-2 V/mの8桁の電界領域にわたる電流輸送特性を計測すると共に、Icの統計分布と熱擾乱の影響を考慮した物理モデルを用いて、四端子法による電界領域から磁化法によって得られる超低電界領域までのE-J特性を解析的に記述することに成功した。 (5)1 mm幅細線加工線材の評価と新たな導体構造の提案:1 mm幅に細線加工した長尺線材の連続Ic計測に成功すると共に、上述したモデリング手法を適用して積層構造によって複合化した際の解析を行い、電流輸送媒体としてのロバスト性に優れる新たな細線化導体構造を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁気センサの走査速度の高速化と雑音低減の実現により、単一チャンネルを用いた走査型磁気顕微観察において線速72 m/hを実現すると共に、Bi-2223長尺線材を用いて500 m長の安定した計測を実証した。本成果は、多チャンネル化によって実用上の目安となる数100 m/hの評価速度の実現を充分見通せるものである。 また、高磁界下の連続測定においては、目標値の3 Tの外部磁界を上回る5 Tの磁界下における連続測定を可能すると共に、測定温度も液体窒素温度に加え、サブクール窒素を用いた65 Kまでの可変温度域における測定を実現した。これらの測定結果によって非超伝導材料を同時堆積する人工ピン導入試料では臨界電流Icのバラツキが大きくなる事を示し、線材メーカとの協力によって、長尺線材内の局所不均一性と磁場依存性を迅速に評価すると共に作製条件へとフィードバックし、人工ピンを導入した高均一高性能線材のプロセス開発に貢献した。さらに、長尺線材の電流輸送特性のモデリングの基礎となる測定データを取得し、長尺線材の大域的かつ局所的電流電圧特性を定量的に記述可能な解析式を提案した。 本手法を線幅1 mmに細線加工を行った40 m長の線材に適用し、離散的な局所Ic低下の分布を連続的に計測すると同時に、局所欠陥の影響を抑えロバスト性を向上する為の新しい積層導体構造を提案し、その有効性を実験と理論的考察によって実証した。 以上の研究成果について、5報の原著論文を提出すると共に、34件の口頭発表(うち10件は招待講演)を行っており、学術的にも高く評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、連続磁化測定による長尺高温超伝導テープ線材の臨界電流分布の評価に関して、高速走査と多チャンネル化の統合によって高速化と高解像度化を実現し、実用レベルの線材評価手法へと展開する。さらに、ピン止めされた量子化磁束の熱励起の影響を明らかとし、通常の四端子法による電界領域から磁化法による超低電界領域を包含する計測評価手法を開発すると共に、長尺線材の空間不均一性をも取り込んだ電流輸送特性のモデリング手法を確立する。また、RE-123線材のみならず、より複雑な多芯構造を有するBi-2223線材における実測との比較によって、高温超伝導線材の標準的な評価手法としての信頼性と定量性を明らかとする。
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