研究課題/領域番号 |
16H02342
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浅野 種正 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50126306)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レーザプロセッシング / ドーピング / 液中レーザ照射 / 炭化シリコン / SiC / パワーデバイス / JBSダイオード |
研究実績の概要 |
・今年度は,ウエットレーザードーピングの基礎特性を調査することを主たる目的として研究を実施した.4H-SiCとしてより技術的障壁の高いp型ドーピングを試みた.塩化アルミニウム水溶液中に浸した4H-SiC半導体にフッ化クリプトン・エキシマレーザを照射するとAlをドーピングできるがドーピング深さが浅いという課題があった.この課題を解決するために,レーザーのパルス幅伸長器を用いてパルス幅を約50nsから100nsに伸長した結果,pn接合の深さ(ドーピング深さ)を約90nmから130nmまで概ね1.5倍に増大できることがわかった. ・デバイス応用の可能性を調査するために,接合障壁型ショットキー(JBS)ダイオードを試作した.Alのドーピングは,塩化アルミニウム水溶液中での照射法を用い,パルス幅伸長器を用いずに照射した.試作したダイオードの順方向特性および逆方向回復特性から本手法を用いることによって大幅にプロセス工程を短縮してJBSダイオード作製できることを示した.一方,逆方向の電流阻止能力はドーピングの効果を確認できなかった.これは,ドーピング深さが浅いためであると推察している. ・ドーピング深さを増大させるもう一つの方法として,SiC表面に堆積したアルミニウム薄膜にレーザーを照射する方法を新たに考案し調査した結果,レーザー照射によってアルミニウムプラズマが表面近傍に発生していること,50ns程度の短パルスレーザーの照射でもドーピング深さを0.2ミクロン程度まで増大できること,溶液を用いる場合に比べてドーピング密度を増大できることがわかった. ・ドーピング深さを増大させるもう一つの方法として,基板を数百度に昇温することも有効であることがわかった. ・電子顕微鏡を使ってpn接合深さを簡便に計測できることを見出した.これは今後の研究に有用である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー照射中のその場温度計測を目指したpn接合温度センサー開発に関しては,若干の遅れが出ている.一方,ドーピング基礎特性の調査については,本手法を実用化する上で最も大きな課題のひとつであるドーピング深さの増大について,パルス幅の伸長,溶融したドーピング源の生成と利用,基板の昇温という3つの方法が有効であることを見出すことができ,予想以上の成果と言える.また,JBSダイオードの作製が可能であることを実証できた点も大きな成果であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の方針・計画どおりに研究を進める.
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