炭化シリコンをはじめとするワイドギャップ半導体は、一般に低接触抵抗の配線電極を形成することが難しく、トランジスタ等の素子を動作させたときの損失増加を引き起こす。本課題で創生を目指してきたウェットレーザードーピング技術は、ワイドギャップ半導体の表面高濃度ドーピングと低接触抵抗金属配線の形成に有効と期待される。本年度は、この有効性を検証するための実験研究を行った。 特に低抵抗化が困難なp型炭化シリコンを対象とした。炭化シリコン上にアルミニウム薄膜をスパッタ堆積し、それにエキシマレーザを照射してアルミニウムを炭化シリコン中に拡散、ドーピングし、チタンとアルミニウムの積層膜をスパッタ法により堆積して電極とした。電極堆積後の加熱は行っていない。 炭化シリコン中に拡散したアルミニウムはレーザー条件に依存して分布形状が変化するが、高濃度ドーピングに多用されるイオン注入法と同等またはより狭い(浅い)領域に分布し、しかも一立方センチメートル当たり10の21乗を超える濃度にドーピングされることがわかった。接触抵抗を伝送線路モデル素子を作製して評価した結果、10の-6乗オーム平方センチメートルまで低減できることがわかった。この値はドーピング濃度から理論的に推定される値とほぼ一致した。この結果は、接触抵抗を従来法に比べて二桁以上低減できることを示している。また、本研究で開発したドーピング法は、工程が簡便で汎用性が高いこと、半導体の加熱を要しないことなどの特徴も有することから、産業応用上の大きなメリットをもつ。
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