既往の研究によりMRIを用いて測定された円筒状回転粘度計の流動場における各種スラリー等の流動速度分布のデータを詳細に分析した結果、まず、回転速度の上昇に伴ってローター近傍の流動場にニュートン流動する領域が出現することを明らかにした。その上で、このようなニュートン流動する領域を除外した残りの流動場における流動速度分布は、二次関数もしくは三次関数の何れかで精度良く近似できることを明らかにした。このことは、レオロジーの分野で“エネルギー逸散の系”と解釈されている非ニュートン流動に、流動速度分布の関数形を微分して得られる一次関数もしくは二次関数に従ってせん断応力が減衰するという明確な応力伝達の減衰メカニズムが存在することを意味している。また、せん断速度が高くなるとローター近傍に出現するニュートン流動する領域では、せん断領域内での“力の釣り合い”が成立していることから、せん断速度が低い時には存在していた応力伝達の減衰メカニズムがせん断速度の増加によって消失することを意味している。既往の研究で明らかにされている球状固体の辛子種の円筒状回転粘度計内における移動速度分布では、停止端に近い側では粒の回転が主たる運動モードで、稼働端に近い側では粒間のスリップが主たる変位モードであることを考えると、流体の非ニュートン流動領域では層内の微小体の回転に伴う微小体間の擦れによるエネルギー損失でせん断応力が減衰し、ニュートン流動領域では層内の微小体の回転が停止することで減衰メカニズムは消失して層間のスリップがせん断ズレの支配機構となって力の釣り合いが成立するとの仮説を提示した。また、流動速度分布を表す二次関数もしくは三次関数の一次項の係数の回転速度の増加に対する大小の変化の傾向と、レオロジーにおける偽塑性流動とダイラタント流動の区分の間に密接な対応関係が存在することを明らかにした。
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