研究課題/領域番号 |
16H02365
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
二瓶 泰雄 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 教授 (60262268)
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研究分担者 |
大槻 順朗 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員(移行) (10618507)
菊池 喜昭 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 教授 (40371760)
佐伯 昌之 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 准教授 (70385516)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 洪水 / 気候変動 / 自然災害 / 耐震 / 減災 |
研究実績の概要 |
(1)既存堤防の決壊危険度評価法の構築 (1-1)大型・小型堤防模型の越水・浸透実験:既存堤防の耐越水・耐浸透性を調べるために,本学所有の大型開水路と小型開水路に模型堤防を設置し,越水・浸透実験を行った.これより,天端補強を工夫する技術開発により,既存堤防の耐越水性が大きく向上することが確認できた. (1-2)越水・浸透決壊データベースの構築:既往の堤防被災事例を収集し,その決壊要因や決壊時の越水・浸透状況,堤体侵食状況を把握した.また,それらを合わせた堤防決壊データベースを基礎的部分を作成した.合わせて,一般の堤体土質データベースから堤体材料情報を入手し浸透流解析を行い,河川堤防の耐浸透性と耐震性の予備的検討を行った. (2)LDR河川堤防の対越水・耐浸透性の検証 (2-1)大型水路におけるLDR河川堤防の越水・浸透実験:実スケールのLDR河川堤防の耐越水性を調べるために,同じ大型開水路に高さ1m以上の模型堤防を設置し越水実験を行った.その結果,LDR堤防は越水開始2時間半後でも初期状態を維持でき,耐越水性が極めて高いことが示された.浸透実験では大型・小型開水路を用いた定水位浸透実験を行った.堤体・補強条件や比較対象(土堤とアーマ・レビー)は越水実験と同様とした.実験と浸透流解析結果より,LDR工法における裏のり面ドレーン工では,土堤と標準型ドレーン工の間の浸潤面高さとなった.また,ドレーン層の幅を大きくすると局所水平動水勾配が大きくなるため,裏のり面ドレーン工には薄層の敷設が望ましいことが示唆された. (2-2)耐震性の検討:地震・洪水複合災害用水路を製作し,既存堤防に関する両災害の影響に関する実験を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究を構成する以下の2つの柱に関して,それおれの進捗状況をまとめる. (1)既存堤防の決壊危険度評価法の構築:大型・小型堤防模型の越水・浸透実験を行い,既存堤防の耐越水・耐浸透性を調べた.特に国内有数の大型水路を用いて大型模型における越水・浸透実験に関して,土堤(裸堤)や標準型ドレーン工,天端舗装などの基本的ね堤防について実施した.また,2016年において最も大きな洪水災害(岩手県小本川,北海道空知川等)において堤防被災事例を収集し,過去の災害と合わせた堤防被災データベースを拡充すると共に,上記実験結果との比較・検討を進めた.このように,この項目は概ね予定通り研究を進められた. (2)LDR河川堤防の対越水・耐浸透性の検証:本研究では,耐越水性・耐浸透性を兼ね備えた薄層ドレーン(LDR)堤防を開発し,大型水路に高さ1m以上の模型堤防を設置し越水・浸透実験を行った.その結果,LDR堤防は越水開始2時間半後でも初期状態を維持でき,耐越水性が極めて高いことが示された.また,LDR堤防の耐浸透性としては,適切なドレーン幅を選定することで,高い浸透安定性を有することが示された.また,地震・洪水複合災害用水路を製作し,既存堤防に関する両災害の影響実験を前倒しで行うことができた.この項目に関しては,当初予定よりも進んでいるといえる. 以上の結果から,今年度の研究は「1)当初の計画以上に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)重点強化箇所効率的選定法の提案 (1-1)前年度の継続と決壊危険度評価法の開発:越水・浸透実験,決壊データベースの蓄積,浸透流・液状化解析を進める.これらより,既存堤防における断面形や土質状況,表面被覆状況に対して,上記実験・観測・解析結果を統合し,越水・浸透決壊危険度評価法を開発する.(1-2)堤防重点強化箇所の効率的選定法の提案:上記の決壊危険度評価法により得られた堤防弱点箇所にて堤防決壊が生じた場合における氾濫被害推定を,平面二次元洪水氾濫シミュレーションにより実施する. (2)LDR河川堤防の耐越水・耐浸透・耐震性の性能検証と実用化 (2-1)越水・浸透実験の継続と細部強化策の検討:前年度に引き続いて,LDR河川堤防の耐越水・耐浸透性を把握するために,大型・小型模型の越水・侵食実験を広範に行う.これらの実験結果を踏まえて,GRS河川堤防の強化策を細部にわたり検討する.(2-2)耐震実験・複合災害実験の実施:基本的な耐震実験を通してLDR河川堤防と土堤,アーマ・レビーの耐震性を比較・検討すると共に,地震時のGRS擁壁・橋梁等の挙動からGRS河川堤防の耐震性評価や問題点を調べ,その改善策を検討する.また,洪水と地震の複合災害実験用水路を用いて,複合災害時におけるLDR河川堤防の耐災性を検討する.
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