研究課題/領域番号 |
16H02367
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 俊行 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (80273465)
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研究分担者 |
森川 高行 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30166392)
三輪 富生 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60422763)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 交通需要マネージメント / 次世代交通システム / 電気自動車 / 自動車共同利用 / 自動運転 |
研究実績の概要 |
(1)自家用車の利用を含めた自動車共同利用システムシミュレーションの構築 自家用車を自動車共同利用システムでの利用に提供するか否かに関連して,自家用車を電気自動車に転換した場合に自動車の利用時間以外での充電をどのようなタイミングで実施するかが自動車共同利用システムへの提供にも影響を及ぼす.本年度は,豊田市で実施されたプラグインハイブリッド車を対象として,充電タイミングの意思決定に関する分析を行った.本社会実験では,動的な電気料金を模擬したポイントシステムにより,車両の充電タイミングの料金感度も観測している.本研究では,充電時間帯を被説明変数とした離散選択モデルを構築し,充電タイミングの決定要因を把握した. (2)自動運転車の導入による交通容量の増大に関する分析 自動運転車両の普及段階では,道路上に自動運転車両と通常の車両が混在するため,交通状態がどのように変化するのか明らかではない.自動運転車両による自動車共同利用システムの運用効率を検討する上で,自動運転車両の導入によるトリップ所要時間の変化を前もって把握する必要がある.本研究では,自動運転車両専用車線の有無が走行速度や交通容量に及ぼす影響をシミュレーション分析によって把握し,自動運転車両の普及率や交通需要,自動運転車両の追従性能等による自動運転車両専用車線の導入の可否を明らかにした. (3)電気自動車の走行電費に関する分析 電気自動車による自動車共同利用システムを運用する際には,車両の残充電量を把握し,トリップ需要に対して車両が電欠をせずにサービスを供給することが可能かを判断する必要がある.その際,走行中の電力消費をモデル化し,走行距離に対する電力消費を正確に予測することが重要である.本研究では,気温やエアコンの利用の有無等を考慮した走行電費モデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)完全自動運転車を用いた場合の自動車共同利用システムの運用方法,(2)共同利用システムの電気自動車から電力系統への電力供給によるピークシフト効果,(3)自動車共同利用システムの利用意向および自家用車の提供意向,の3点について明らかにすることを目的としている.(1)については,これまでに世帯が保有する自家用車を利用した共同利用システムの運用シミュレーションモデルを構築し,複数の形態での共同利用システムの運用効率性について検討を進めている.(2)については,実データに基づいて自家用車が電気自動車の場合とプラグインハイブリッド車の場合の充電タイミングに関する分析を行った他,電気自動車から電力系統への電力供給に対する参加意向に関するアンケート調査を実施している.(3)については,アンケート調査データに基づき,世帯の自家用車提供意向や自動運転車両による共同利用システムに対する利用意向等について把握している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)電気自動車への転換可能性の分析 ガソリン自動車から電気自動車への転換の大きな障害となっているのは電気自動車の1充電当たりの航続距離の短さである.消費者は,電欠により日常的な利用が影響を受けることを懸念し電気自動車への転換を躊躇する傾向がある.ただし,多くの自動車利用者の日常的な走行距離は現在の電気自動車の航続距離の範囲内であることも多い.今後は,名古屋大学の公用車および愛知県の一般世帯が保有する自動車を対象として,長期的な走行距離観測データに基づき,日常的な走行距離の分布から電気自動車への転換可能性を分析する. (2)パークアンドライド型自動運転車共同利用システムの導入可能性の分析 今年度までの分析では,自宅に駐車された自動運転車を活用した自動車共同利用システムの運用可能性を検討してきたが,自宅に駐車されている自動車は現時点で利用されていないことを表すため,当該世帯が将来的にも自動車保有を継続するかは不明である.今後は,将来時点で自動車を利用している世帯の保有自動車に着目し,それらの世帯のうち,自動車を端末駅までのアクセスに利用するパークアンドライドによって通勤行動を行う世帯を対象として,端末駅に駐車された自動運転車を活用した自動車共同利用システムの実現可能性を分析する. (3)自動運転車共同利用システムのサービスモデルの受容性に関する分析 自動運転車共同利用システムの受容性を向上させるためには,利用者の様々な需要に対応することが有効である.今後は,子どもの単独利用の可否や大きな荷物の受け入れ可否,乗降時間の延長等の様々なサービスに対する賛否や支払意思額をアンケート調査に基づき分析し,将来の自動運転車共同利用システムの望ましい形態について検討する.
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