研究課題/領域番号 |
16H02368
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井料 隆雅 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10362758)
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研究分担者 |
赤松 隆 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90262964)
原 祐輔 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (50647683)
日下部 貴彦 東京大学, 空間情報科学研究センター, 講師 (80604610)
和田 健太郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20706957)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 交通ビッグデータ / 動学的交通モデル / 動学的マネジメント |
研究実績の概要 |
人や車の動きを常時観測して得られるビッグデータから得られる交通関連の知見は,最終的には交通システムのよりよいマネジメントに活用すべきだろう.ビッグデータの高時間精度の常時観測という特長を活かした交通システムの動学的マネジメントは一つの答えである.一方,場当たり的な動学的マネジメントは意図しない不安定な動学的挙動を生み,結果として望ましくない状況を招きかねない.本研究の研究期間全体(4か年)での目標は,ビッグデータを用いた動学的な将来予測手法の構築と,それを用いた,動学的な安定性を担保した次世代交通システムのための動学的マネジメント手法構築であり,本年度はその初年度である.本研究は大きく「動学モデル」「ビッグデータ」「動学的マネジメント」の3パートからなる.「動学モデル」においては,交通現象の動学モデルと予測の逐次補正手段,動学的将来予測手法の仮構築と評価を行っている.H28年度の時点では手法の仮構築であり,数理モデルとしての理論的課題を整理しつつ,複数のシナリオにおいてその特性の評価を行っている.「ビッグデータ」では最新技術のレビューを行った.ビッグデータとしては,特に,「メールした」「手帳に予定を記した」「時刻表を調べた」など,将来の行動を示唆する行動を含むようなデータを主に想定しつつレビューを行った.結果,Webの検索履歴による将来予測などの事例を見つけ,それらを調査整理した.「動学的マネジメント」では既存マネジメントの手法の整理を行った.本研究は海外研究者と連携し実施している.国際ワークショップを英国で開催したほか,連携している海外研究者の1名であるMike Smith氏(ヨーク大学名誉教授)との共同研究が国際会議International Symposium on Transportation and Traffic Theoryにて採択されている(発表はH29).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「動学モデル」「ビッグデータ」「動学的マネジメント」の各パートの研究に着手し,おおむね順調に成果をあげている.ただし,「動学モデル」については,複数のシナリオ間の連携が十分にとれているとはいえない(数理的解析を試みようとすると,どうしても全要素を同時に考慮することは難しくなるので,数理的解析による連携には困難が伴う).平成29年度以降は,ここで得られた知見を集約しつつ,今年度の研究計画で実施予定である「動学的将来予測手法の構築」に結びつける必要がある.また「ビッグデータ」については,「将来予測」という観点からの研究が当初想定よりも多く見当たらないという問題があった.平成29年度以降は,既存研究の知見に頼るよりも,研究課題内で未来の可能性を予測しつつ独自に提案する必要性が高まっていると考えている.また,ビッグデータに関する技術は進歩の速度が非常に速いため,平成29年度以降も,ビッグデータに関するモデル構築と並行して情報収集を継続することが好ましいと考えられる状況である.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初計画通りの実施となる.すなわち,平成29年度は「動学的将来予測手法を構築」「ビッグデータモデルの構築」「動学的マネジメント手法の仮構築」を実施することを予定している.「動学的将来予測手法」については,平成29年度は数理的解析よりも数値計算の比重が高くなるため,特に,数値解析手法について早期の構築と実装をすることが必要になると考えている.これは,複数のシナリオ間の連携をとるプラットフォームとしても重要となると考えている.「ビッグデータ」については,既存の事例が想定よりも少ないことを見ると,かなり独自の発想によるモデル構築が必要になるとみている.独自性による新規性を狙いつつも,今後の技術革新で出現することが想定される事例との齟齬を事前に回避できるような配慮が求められるだろう.この点に注意して,今年度予定しているビッグデータモデル構築を実施する.「動学的マネジメント手法の仮構築」については,平成28年度の「動学的将来予測手法」の研究の中からすでに着想を得ているものもあり,それを活用しつつ研究を実施することを計画している.
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