研究課題/領域番号 |
16H02371
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
山口 隆司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (10280447)
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研究分担者 |
幡本 将史 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 特任准教授 (20524185)
押木 守 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (90540865)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 下水処理 / 嫌気性処理法 / 高度処理 / 硫酸塩還元 / 硫黄酸化 / 微生物生態解析 |
研究実績の概要 |
省エネ・自立性の観点から嫌気処理法を主体とした水処理技術の開発が行われている。本研究では、これまで培ったオリジナルの硫黄サイクル微生物制御技術を基盤とし、有機物等の分解に関わるエレクトロンタワー基盤微生物群を活性化して、有機物分解、脱硫、炭素固定およびメタン生産を高めることで、処理水の向上と、低温でも稼働可能な自立型の水質循環システムの構築を行うことを目的としている。 具体的には、嫌気的硫黄酸化反応の発現条件を明らかにするために、複数の嫌気的上昇流汚泥床型のラボスケールリアクターを1年以上長期連続運転し、保持微生物生態が定常状態に達する状態を得た。それらのリアクターの保持微生物に対して、嫌気的硫黄酸化の発現が良く起きる条件などを、リアクター連続運転における供給基質と反応槽内水質、およびリアクターのプロファイル水質から検討を行った。その結果、基質種、有機物濃度、ORP条件について嫌気的硫黄酸化反応が良く発現する条件を明らかにできた。 また、実下水を流入させた嫌気的排水処理システムの反応槽保持微生物の生態評価として、バクテリア,古細菌以外の関与についても明らかにするため、大型微生物である原生動物にも注目し、次世代シーケンサー、蛍光ハイブリダイゼーション法による顕微鏡観察、実体顕微鏡観察について開発を進めた。この結果、嫌気的条件下でも生息する主な原生動物の検出が可能となった。また、嫌気的硫黄酸化反応が進行する条件の下水処理嫌気性汚泥床においても原生動物はよく観察されることが明らかにできた。くわえて、実下水を処理する嫌気性廃水処理リアクターのウイルスと細菌の定量方法についても次世代シーケンサーを用いて解析を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
省エネ・自立型の観点から、浸漬曝気操作無しで、高度処理も含めた排水処理システムの構築を目的として研究を推進している。 嫌気的硫黄酸化反応の生態を解明するために、嫌気的上昇流汚泥床型のラボスケールリアクターを運転し、嫌気的硫黄酸化が起きる微生物の保持・培養・集積を進めた。供給基質と上昇流汚泥床上部の水質分析を行い、供給基質中の水質項目と嫌気的硫黄酸化の発現との関係を評価した。その結果、供給基質中のCOD濃度と嫌気的硫黄酸化の発現との間に強い相関があること、即ち、流入COD濃度が 200 mg/L程度以下レベルで嫌気的硫黄酸化の発現は良く起きることを見出し、嫌気的硫黄酸化の発現の制御方法として重要な知見を得た。 リアクター高さ方向の物質濃度プロファイル観測により、嫌気的上昇流汚泥床の酸化還元電位(ORP)と嫌気的硫黄酸化の発現との関係を評価した.その結果,ORP範囲が-280 ~ -260 mVのでは嫌気的硫黄酸化の発現は30~80%程度の高い傾向を示した。ORPが-260 mVよりも負側の領域では嫌気的硫黄酸化の発現は10~30%程度である傾向が観測できた。従って,嫌気的上昇流汚泥床の嫌気的硫黄酸化反応の促進のためには槽内のORPを-250 ~ -280 mV程度に維持し、且つ、低COD濃度の基質(200mg/L以下程度)を供することが効果的であると示唆された。 嫌気的硫黄酸化反応発現環境と基質の有機物種との関係を明らかにするために、乳酸、酢酸,蟻酸等のを用いて硫黄酸化反応の発現特性について代謝産物について評価した。また、排水処理システムの反応槽保持微生物評価の開発を、次世代シーケンサー、蛍光ハイブリダイゼーション法による顕微鏡観察、実体顕微鏡観察,等を駆使して、計画通り進めている。
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今後の研究の推進方策 |
実下水処理の嫌気性処理装置で起きている嫌気的硫黄酸化反応の生態を解明するために、ラボスケールリアクターを複数作成し、大学内でその反応を模擬した実験を継続する。そのリアクターを用いて、高さ方向の物質濃度プロファイルや次世代シーケンサーによる網羅的解析や高感度FISH法、分子生物学的系統解析、マイクロセンサー技術、代謝活性試験など行い、微生物学的反応機構を解明する。また、複数の基質を用いて、反応を担う微生物の基質特異性を評価する。 本ラボ試験の結果を下水処理場で実施している、実証試験のデータと相互に確認することで、硫黄酸化反応にとって重要な因子の特定を目指す。 嫌気的硫黄酸化反応機構の解明、微生物探索として硫黄酸化還元に関わる酵素をコードする機能遺伝子等を対象にした網羅的遺伝子解析を行う。解析結果をもとに、高感度微生物検出法 (in situ HCR法など)を適用し微生物の形態的特徴を把握する。本結果は、電位制御培養による評価に用いる。また、安定同位体標識基質(13CO2)を用いた微生物ラベル・トレーサー実験を行うことで、安定同位体を体内に摂取した微生物の推定を行う。 本技術を国内および途上国にて普及させるために、省エネ、汚泥・二酸化炭素排出削減効果の評価を行うためのデータ取得や試算を開始する。
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