研究課題/領域番号 |
16H02372
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
藤原 拓 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (10314981)
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研究分担者 |
田中 宏明 京都大学, 工学研究科, 教授 (70344017)
山下 尚之 京都大学, 工学研究科, 講師 (90391614)
李 善太 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (60771962)
深堀 秀史 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 准教授 (70617894)
水野 忠雄 京都大学, 工学研究科, 講師 (00422981)
張 浩 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90452325)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 逆浸透濃縮排水 / 回転円板型促進酸化装置 / 省エネルギー / 微量化学物質 |
研究実績の概要 |
下水再利用のための限外ろ過+逆浸透(RO)パイロットプラントから、RO原水およびRO濃縮排水を採取し、その性状を明らかにするとともに凝集沈殿処理による溶存有機炭素除去特性を評価した。その結果、RO濃縮排水の前処理としてPACによる凝集沈殿処理が有効なことが示された。ゼオライト/ 酸化チタン(TiO2)複合シートを用いてサルファ系抗菌剤SMTの処理を行い,シート化が医薬品除去性能に及ぼす影響ならびにUV照射強度が除去速度に及ぼす影響を評価した。また、複合シートによりRO濃縮排水中のクロタミトンが効率的に除去できることを明らかにした。次に、回転円板型促進酸化装置(RAOC)に適用するシートの最適化を行った。PETを主成分とする主体繊維と熱融着繊維を併用し、シート成型後に加熱によるバインダー処理を施すことで、フレキシブルで水中での使用に適した複合シートを調製した。目標の歩留まり90%を達成できる凝集剤添加量を決定し、この時のシート強度は回転円板への装着および運転に充分であることが示された。また、シート中の機能性材料の配合割合は70wt%まで高めることが可能であり、機能性材料の配合割合と要求される強度に応じて、バインダー繊維の配合量と乾燥温度を調整する必要が示された。合成繊維を利用して調製した複合シートをRAOCに搭載し、3ヶ月間の水中での連続運転を行った結果、複合シートは充分な強度を有することが示された。初期濃度10 mg/LのSMT 水溶液をラボスケールのRAOCにて処理した結果、6時間で約96%のSMTが水中から除去された。一方、シート中のSMT量は増加後に紫外線の照射によって減少したことから、吸着後に光触媒反応により分解されたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、逆浸透濃縮排水処理の省エネルギー化を実現する回転円板型促進酸化装置(RAOC)の開発を目的としており、処理水水質目標(溶存有機炭素(DOC):15mg/L、微量化学物質:90%除去)を、単位消費エネルギー 1kwh/m3(従来より80%以上削減)で達成することを目指している。平成28年度は、RO濃縮排水の性状と基本処理特性の評価を行った。また、RAOCに適用するシートの最適化およびラボスケール装置によるRO濃縮排水の処理特性評価と処理メカニズムの解明を開始した。RO濃縮排水の性状と基本処理特性の評価については、1)有機物の生物分解性を評価、2)凝集沈殿処理によるDOCの除去特性、3)吸着材による微量化学物質およびDOCの除去特性の評価を完了した。4)酸化チタン(TiO2)による微量化学物質・DOCの光触媒分解特性と生物分解性の変化については、平成29年度に持ち越しとなったが、ほぼ予定通り研究が進捗した。RAOCに適用するシートの最適化に関しては、平成29年度のRAOCパイロット装置の製作を見据えて、有機繊維・バインダーを使用したシートを試作と最適化を進めるとともに、耐久性の評価を行うなど、平成28年度計画を超えた進捗がなされた。また、ラボスケール装置によるサルファ系抗菌剤SMT の処理特性を評価するとともに、複合シートによりSMTが吸着された後に光触媒反応により分解されるという処理メカニズムの解明がなされた。以上より、現在までに本研究は概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、酸化チタン(TiO2)による微量化学物質および溶存有機炭素(DOC)の光触媒分解特性と生物分解性の変化を調査する。回転円板型促進酸化装置(RAOC)に適用するシートの最適化については、微量化学物質以外のDOCの除去のため単一の吸着材ではなく、複数種のゼオライトや活性炭等を配合したシートの作製を試みる。機能性材料の担持に用いる凝集剤やバインダーの使用量ならびにシート作製条件を調整し、活性低下を抑えたシート調製条件を見出すとともに、シート構造と吸着特性との相関を検証する。ラボスケール装置によるRO濃縮排水の処理特性評価と処理メカニズムの解明では、開発したシートを搭載し、RO濃縮排水の処理特性を引き続き評価する。具体的には、1)装置内の流動特性を評価するとともに円板シートへの物質移動特性を明らかにする。2)RO濃縮排水に含有される微量化学物質を対象として、RAOCによる吸着・分解速度の評価と影響因子の検討を行う。3)RAOCによる微量化学物質の分解中間生成物・分解経路の推定を行うとともに、RAOC処理にともなう生分解性および生態毒性の変化を明らかにする。4)各々の中間生成物のシートへの吸脱着特性と生分解性・生態毒性を明らかにすることにより、一連の処理メカニズムを明らかにする。さらに、パイロットスケールのRAOCを設計・製作し、流速分布および円板シートへの物質移動特性を詳細に解析する。RAOCに関して、各種の影響因子を変化させた一連の実験条件を設定し、これらが処理性能に及ぼす影響を明らかにする。平成29年度はこれらの研究に加えて、RAOCによるRO濃縮排水処理の実験結果を再現しうる数理モデルの構築を開始する。また、パイロットスケール装置による連続処理試験により、シートの耐久性評価を行う。
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