研究課題/領域番号 |
16H02374
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田村 修次 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40313837)
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研究分担者 |
河野 進 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30283493)
林 和宏 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40725636)
木村 祥裕 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (60280997)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 杭基礎 / 大地震 / 耐震設計 / 終局限界 / 沈下 |
研究実績の概要 |
大地震時における群杭の応答特性評価では,遠心載荷実験で水平荷重による転倒モーメントを受ける群杭の軸力性状を考察し,転倒モーメントによる引抜き力が隅杭の引抜き抵抗力に達すると,回転中心が押込み杭側に移行し,中杭にも引抜き力が生じることを示した。また,杭の水平抵抗力を算定する際に重要な基礎根入れ部に作用する土圧を粘性土について遠心載荷実験で計測し,主働土圧の新しい評価法を提案した。さらに,遠心載荷実験で用いる小型モルタル模型のクラックの発生を検知するデバイスを開発し,その有効性を示した。この技術は超小型モルタル杭のクラック発生を把握するのに適用できる。 鋼管コンクリート系杭(SC杭)における杭頭接合部の詳細モデル実験と数値モデル構築では,SC杭の静的載荷実験を行い,終局限界まで曲げモーメント-曲率関係,荷重-変位関係等を評価した。さらに,OpenSeesを用いて数値解析を行い,実験結果を概ね説明できることを示した。 鋼管コンクリート系杭における杭頭接合部の詳細モデル実験と数値モデル構築では,鋼管内部にずれ止めを考慮して,コンクリート充填鋼管杭頭部の局部座屈性状を明らかにした。さらに,地震時の鋼管杭の保有性能を把握するために短柱圧縮実験を行い,ずれ止めが鋼管杭の終局耐力,塑性変形能力に及ぼす影響を明らかにした。 モルタル杭の遠心載荷実験では,超小型モルタル杭を用い,地盤-杭-構造物系の遠心場振動台実験を実施し,大地震におけるRC系杭の破壊過程と上部構造物の沈下・傾斜に対する影響を検討した。それより,杭の破壊が進行すると,上部構造物に作用する慣性力は一定値で頭打ちとなること,RC系杭は杭頭にせん断破壊が発生するまで,上部構造に顕著な沈下や傾斜の被害が発生しないことを示した。上記の成果は,査読論文5件,国際会議論文2件,口頭発表22件として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大地震時における群杭の応答特性評価では,まず,杭間地盤を考慮した応答変位法モデルを提案し,深度による群杭効果の違いを簡易モデルで説明することに成功した。また,杭先端の境界条件が杭応力に及ぼす影響を検討し,そのメカニズムを明らかにした。さらに,地震時の周面摩擦力が常時の周面摩擦力より大きいことを示した。 鋼管コンクリート系杭(SC杭)における杭頭接合部の詳細モデル実験と数値モデル構築では,杭体の曲げやせん断,杭頭接合面の曲げなどの実験結果に基づいて,数値解析モデルを制作し実験結果の再現を行った。杭体や杭頭接合面の曲げに関しては,試験体曲げ耐力を安全側に見積もることができた。ただし,杭頭接合面の曲げ耐力予測値は5割以上の誤差があり,今後更なる検討を必要とする。 鋼管コンクリート系杭における杭頭接合部の詳細モデル実験と数値モデル構築では,実大レベルの鋼管杭頭部の短柱圧縮試験及び有限要素解析を行い,ずれ止めの有無による鋼管からコンクリートへの応力伝達機構,鋼管杭の終局耐力及び塑性変形能力を明らかにした。ずれ止め形状,コンクリート強度,鋼管径厚比などをパラメータとした縮小模型試験体の短柱圧縮局部座屈実験を行い,各パラメータの影響を明らかにしつつある。 モルタル杭の遠心載荷実験では,当初計画通り,超小型モルタル杭を用いた振動台実験を多数実施した。実験では,杭体が曲げ破壊するケースとせん断破壊するケースについて,地盤-杭基礎建物連成系の最大耐力および終局状態を明らかにした。更に,研究の最終目標である杭基礎の次世代耐震設計法提案に向けて,破壊ケースごとの群杭係数評価法と最大耐力算定法に関する考察を進めた。 以上のように,当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
大地震時における群杭の応答特性評価では,遠心載荷における静的載荷試験,振動実験さらに数値解析を行い,杭間地盤を考慮した応答変位法モデルの拡張,群杭における杭先端の境界条件が杭応力に及ぼす影響,地震時における杭周面摩擦力の増大メカニズムおよび簡易評価法を検討する。また,これまでの実験モデルでは杭頭を剛な基礎版に固定していたが,基礎梁の剛性も実験パラメータにし,基礎梁の応力についても検討対象とする。 鋼管コンクリート系杭における杭頭接合部の詳細モデル実験と数値モデル構築では,鋼管コンクリート杭(既製および場所打ち)に対し,軸力と曲げを受ける杭頭接合部とパイルキャップの力の伝達をモデル化するために必要な支圧タイプの載荷実験を行い,力の伝達状況と破壊性状を明らかにする。さらに,抵抗機構に基づいた杭頭部分のM-θ関係,杭体のM-κ関係の数値モデル化を高精度化する。 鋼管コンクリート系杭における杭頭接合部の詳細モデル実験と数値モデル構築では,地震時における杭の保有性能を高精度で評価するためには,繰返し載荷における最大耐力時および全塑性耐力低下時の曲率を求めることが望ましい。変動軸力および水平力の漸増繰返し載荷実験および有限要素解析と載荷履歴の影響を考慮した骨格曲線によりM-φ関係モデルを構築し,鋼管杭の塑性率(要求値)と塑性変形能力(保有性能)との関係を確立できる。 モルタル杭の遠心載荷実験では,今後は,超小型モルタル杭を用いて群杭効果に関する検討を進める。特に,大地震におけるRC系杭の破壊過程,杭の破壊が杭の水平抵抗および上部構造物応答に及ぼす影響を明らかにする。更に,それまでの知見を総括することで,本研究の最終目標である軸力変動を考慮した杭基礎の次世代耐震設計法の提案に繋げる。
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