研究課題/領域番号 |
16H02375
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
元結 正次郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60272704)
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研究分担者 |
水谷 国男 東京工芸大学, 工学部, 教授 (40468913)
山下 哲郎 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (80458992)
西川 豊宏 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (80594069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 吊り天井 / 設備機器 / 耐震性能 / 動的不安定挙動 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、本研究で挙げている「隙間なし天井システムにおける損傷発生機構を明らかにすること(課題A)」について重点的に実験等を実施した。具体的には以下のとおりである。 昨年度に引き続き吊り天井システムにおける吊りボルトを抽出した動的実験を実施した。平成29年度の実験の特徴は、試験体の吊りボルト下端に設置する質点を単なる錘ではなく、鋼製下地在来工法天井の実際の仕様を想定した天井面とした点である。この試験体に鉛直方向加振を実施し、昨年と同様に動的不安定現象が発生し、その結果として接合金物の脱落ならびに天井面が落下する挙動が発生することを確認した。このことは本研究課題の課題Aに対するひとつの解が見出されたことを意味する。さらに、鋼製下地在来工法天井を対象としてこれを構成するすべての構成要素から成る試験体に様々な複合力を作用させたときの損傷過程を実験にて確認した。ただし、得られた実験結果を数値解析モデルを適用し再現を試みたが、傾向としては捉えられているものの精度として芳しいものではなかった。 熊本地震で被害が確認された米国に代表されるグリッド・システム天井に着目し、その下地材、特に接合部要素の静的加力実験ならびにこれに対応する数値解析を実施した。 一方で、天井システム加振実験が振動台改修作業未完了のために実施できなかったために、その代りとして健全性評価を目的とした実験を実施した。これは接合金物の一部を人的に外した天井面の固有振動数を計測する実験であり、これにより天井面の損傷具合と固有振動数には相関があることを定量的に示すとともに、超低周波音対応騒音計によって固有振動数が測定可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に取り組む以前に予備的に行った数値解析などによる予想が大きく間違っていなかったために実験などの手戻りが少なかったため概ね順調に進展していると考えている。 ただし、これまで構築してきた天井用鋼製下地材の数値解析モデルのさらなる精度向上の必要性が確認されたために今後改善していく必要がある。 また、昨年度に引き続き今年度も天井システムのユニット試験体による動的実験は振動台の制御系の改修完了が3月となってしまっために行うことができなかった。そのために、非構造要素の健全性を評価するための手法について予備的な実験を実施し、上記の遅れを別の角度から補うことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した吊りボルトの動的不安定挙動をさらに理論的あるいは数値解析的に分析する。特に、接合部モデル化の精度を向上させることで、吊りボルトの動的不安定によって発生する接合部の脱落挙動を忠実に再現可能とするシミュレーション法を作成する。また、平成29年度まで振動台の不調により滞っていた比較的長い吊りボルトを有する天井システムのユニット動的実験を振動台の改修が完了後直ちに実施し、上記の不安定現象が天井システムに及ぼす影響について実験的検討を実施する。 グリッド・システム天井については、その動的性状を確認するためのユニットによる動的実験を実施し、面内剛性等の耐震設計上必要な情報を整備する。 設備機器の耐震化において用いられる工法が施されたシステムにおける工法の有効性を動的実験により検証する。
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