研究課題/領域番号 |
16H02379
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷見 雄二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40298138)
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研究分担者 |
鈴木 淳一 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (10453846)
堀 英祐 近畿大学, 産業理工学部, 講師 (20547046)
鍵屋 浩司 国立研究開発法人建築研究所, 防火研究グループ, 上席研究員 (90298191)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 火災工学 / 火災性状 / フラッシュオーバー / 内装 / 入射熱 |
研究実績の概要 |
当該年度の中心的な研究として、大規模居室の試験体を製作し、天井を不燃化したうえで、壁内装を、(1)不燃、(2)木材、(3)壁紙の3段階として、プロパンバーナーを火源とする一連の室火災実験を行った。(1)不燃内装実験では、床上の火源により壁面上部で木材などの水平火炎伝播が起こり得る火源発熱速度を把握のうえ、壁面上部の入射熱を、煙層からの熱伝達、周囲壁面からの放射熱、火源からの放射熱から予測できるようにするための各種測定を行った。(2)木質内装実験では、(1)で設定した火源条件のもとで、壁面上部の木材で水平火炎伝播が起こるようにし、その時の火炎伝播状況、壁面入射熱、木材表面温度等を測定した。(3)壁紙仕上げ実験では、防火材料に位置づけられない壁紙について、火炎伝播性状を観測し、入射熱の推移を把握した。以上に基づき、(a)ゾーンモデルによる煙層温度及び煙層に曝される壁面の入射熱の予測可能性の検証、(b)可燃内装での表面火炎伝播時の火炎から予熱域への入射熱の把握、(c) 天井面下の壁面における木材・壁紙の水平火炎伝播限界入射熱の把握を行った。この結果、木材、壁紙内装とした場合に水平方向に加速的な火炎伝播が生じる限界の表面温度及び入射熱の値を特定できた。内装表面で火炎伝播が起こる前の段階での入射熱については、煙層からの表面熱伝達以外は、加熱源の代表温度を与えれば古典的な伝熱モデルで実験結果と良い一致を示したが、煙層からの表面熱伝達については一般的に使われている表面熱伝達では過小評価になることがわかった。これについては、第3年度に引き続き、検討することとした。以上により、天井を不燃化した場合の木質壁については、フラッシュオーバーの発生の有無の予測の見通しがつけられた。また、加熱される木材の温度変化の予測に必要な諸物性の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天井を不燃化した大規模居室において、壁面を可燃材料で仕上げた場合の水平火炎伝播によるフラッシュオーバーの発生の有無、発生時間について、それらの直接の支配要員である壁面入射熱の予測法を基本的に構築でき、可燃内装材料を壁面に用いた場合のフラッシュオーバーの発生の有無、発生条件の予測に関して残す主な課題は、煙層からの表面熱伝達に関するパラメータ同定(表面熱伝達係数等)、壁体内非定常熱貫流予測と、内装材料の性能把握の実用的方法の構築のみとなった。壁体内非定常熱貫流予測は、温度が高いことを除くと環境工学において確立されており、本課題では100℃以上で壁体内での水分・結晶水の蒸発等を考慮する必要がある以外は、既存モデルの延長上でモデル化が可能である。これらの課題については、第3年度に十分、解決可能である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果に基づき、ゾーンモデルに基づいて、天井が不燃化された場合の内装の火炎伝播によるフラッシュオーバー発生限界の予測法を構築する。本モデルの開発にあたっては、更に、壁体内の熱伝導の非定常計算も必要であるが、常温付近では解決されており、本課題では壁体内が高温になることを踏まえた改良を加えて、そのモデル開発を行う。一方、このモデルに投入する内装材料の物性を既存の測定装置により把握する実用的方法を開発する。
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