研究課題/領域番号 |
16H02390
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
土井 正晶 東北学院大学, 工学部, 教授 (10237167)
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研究分担者 |
佐久間 昭正 東北大学, 工学研究科, 教授 (30361124)
飛世 正博 東北大学, 工学研究科, 産学官連携研究員 (30766762)
齊藤 伸 東北大学, 工学研究科, 教授 (50344700)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁性材料 / 多元系窒化鉄 / 微粒子 / 磁気特性 |
研究実績の概要 |
電力の過半を消費しているモーターの効率向上を図るため、磁性材料の高性能化が必須となっている。本研究は高飽和磁化Fe16N2ナノ粒子の合成技術をベースに、Feの一部をM元素 (M=V、Cr、Mn…)で置換し、Nの配位を変化させることによって(Fe,M)16N2の磁気異方性を制御し、レアアースフリーの高性能磁性材料の創出を図ろうとするものである。具体的には多元系(Fe1-XMX)16N2ナノ粒子の合成方法を確立し、M元素のFe置換サイトおよびNの規則・不規則配位を可能にすることを目指している。 昨年度は、第一鉄塩水溶液の中和‐湿式酸化法を用いてα-FeOOHナノ粒子のFeの一部をV、Cr、Mnで置換する検討を行った。これらの元素で置換した場合、磁化の低下が大きかったので、今年度はCo、Niを選んだ。これまで作製したV、Cr、Mn置換系も含めて構造解析および磁気特性の評価を行った。合成したα-(Fe,M)OOHナノ粒子の結晶性をX線回折で評価したところV、Ni、Mn、Cr、Coの順で高くなった。いずれも高濃度置換は難しく5 at%以下の導入に留まった。5 at%置換α-(Fe,M)ナノ粒子の磁化はCoとNiが207 emu/gとなり、Vの185 emu/g、CrとMnの178 emu/gに対して高くなった。次にα-(Fe,M)OOH → α-(Fe,M)2O3 → α-(Fe,M) → (Fe,M)16N2 と変化させる還元・窒化プロセスにおいてガス反応条件を検討した。M元素を添加すると(Fe,M)16N2が得られる窒化条件は厳しくなり、これまでCo、Ni、Vについてのみ合成に成功しているが生成率は十分ではない。(Fe,M)16N2ナノ粒子の保磁力はCo、Niの場合は低くなり、Vの場合は高くなることがわかった。この理由を明らかにするため、真性的な磁気異方性の評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
M元素としてCo、Niを選ぶことにより磁化は高くなったが、結晶性の高いα-(Fe,M)OOHナノ粒子の合成が難しく、反応条件を見出すのに多くの時間を費やすこととなった。(Fe,M)16N2を合成するための還元条件および窒化条件もM元素によって異なり、(Fe,M)16N2の生成率を高くするためにガス反応条件の設定を詳細に行うことが必要となっている。しかしながら、合成に成功した系では、磁気特性の変化が現れており、M元素置換効果を明らかにする端緒を掴むことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
原料となるα-(Fe,M)OOHナノ粒子の合成条件、および(Fe1-XMX)16N2を合成するための還元、窒化条件を見出すことに時間を費やしたがCo、Ni、Vについてはその合成に成功した。これらの系につきさらにその生成率を向上させるとともに磁気特性評価、構造解析を行い、合成プロセス条件にフィードバックしてM元素置換メカニズムを追求する。同時に理論計算結果とも照らし合わせ材料設計指針を獲得する。 最終年度は(Fe95M5)16N2ナノ粒子 (M=Co,Ni,V) に集中して置換系の磁気特性の変化を明らかにしレアアースフリー磁性材料としての可能性を評価する。研究項目は以下のとおり 1. (Fe95M5)16N2ナノ粒子の生成率の向上 1.1 (Fe95M5)16N2ナノ粒子のガス反応条件の精密化 2. メスバウアーおよびX線回折、電子回折によるサイト選択性ならびに規則化の解析 2.1 (Fe95M5)16N2ナノ粒子におけるM元素のサイト選択条件の検討 2.2 (Fe95M5)16N2ナノ粒子におけるNの規則化条件検討3.(Fe95M5)16N2ナノ粒子の磁気特性の評価 4. M元素置換系における飽和磁化、磁気異方性の第一原理計算
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