研究課題/領域番号 |
16H02393
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
東 正樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40273510)
|
研究分担者 |
山田 幾也 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30378880)
水牧 仁一朗 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (60360830)
綿貫 徹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子ビーム科学研究部門, 室長代理(定常) (30343932)
妹尾 仁嗣 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 専任研究員 (30415054)
岡 研吾 中央大学, 理工学部, 助教 (80602044)
北條 元 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90611369)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ペロブスカイト / 電荷秩序 / 電荷分布 / 放射光X線 / 中性子回折 / 硬X線光電子分光 |
研究実績の概要 |
鉛と3d遷移金属(用語3)を含むペロブスカイト型酸化物として確立していたのは、強誘電体として良く知られているチタン酸鉛(Pb2+Ti4+O3)だけだったが、我々の研究により、バナジン酸鉛がPb2+V4+O3、クロム酸鉛と鉄酸鉛がPb2+0.5Pb4+0.5Cr3+O3と Pb2+0.5Pb4+0.5Fe3+O3、ニッケル酸鉛がPb4+Ni2+O3の電荷分布を持つことが報告され、チタン(Ti)→バナジウム(V)→クロム(Cr)→鉄(Fe)→ニッケル(Ni)と、元素周期表を右に進むにつれて、鉛(Pb)の価数が増加し、遷移金属の価数が減少する傾向が分かりつつあった。コバルト(Co)はFeとNiの間に位置するため、両者の中間的な電荷分布が期待されるが、PbCoO3はこれまで合成されていなかった。 15ギガパスカル(GPa、15万気圧)という超高圧を用いることで、世界で初めてPbCoO3の合成に成功、放射光X線粉末回折と中性子回折、硬X線光電子分光の結果、ペロブスカイト型構造(一般式ABO3)の、AサイトにPb2+とPb4+が1:3で、BサイトにCo2+とCo3+が1:1で秩序配列した、四重ペロブスカイトと呼ばれる構造を持っていることが明らかになった。 すなわち、PbCoO3は、Pb2+0.5Pb4+0.5Fe3+O3とPb4+Ni2+O3の中間の、Pb2+0.25Pb4+0.75Co2+0.5Co3+0.5O3(平均価数はPb3.5+Co2.5+O3)という特殊な電荷分布を持つことが明らかになった。その結果、PbCoO3は単純な組成であるにも関わらず、Pb2+とPb4+、Co2+とCo3+の違いを考慮すると、四重ペロブスカイトと呼ばれるPb2+Pb4+3Co2+2Co3+2O12の複雑な結晶構造を持つ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PbCoO3の結晶構造と電荷分布を明らかにしたほか、PbMnO3の良質の合成にも成功、硬X線光電子分光測定によって、Pb2+とPb4+が混在していることが明らかになった。また、PbCoO3のAサイト、Bサイト電荷秩序を報告した論文は、Journal of the American Chemical Societyに掲載され、プレスリリースも行い、鉛ペロブスカイトの系統的な電荷分布変化を広く世の中に公表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
残っているPbMnO3、PbFeO3の結晶構造解析に注力すると共に、PbCrO3の巨大な圧力誘起体積収縮を負熱膨張につなげる研究を行いたい。具体的にはPbCrO3とPbTiO3、PbVO3の固溶体の研究を行うことを計画している。これにより、Pb2+0.5Pb4+0.5CrO3の状態が不安定になり、昇温によって体積の小さなPb2+Cr4+O3への転移が起こるようになると期待される。
|