研究課題/領域番号 |
16H02394
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鶴見 敬章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70188647)
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研究分担者 |
武田 博明 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00324971)
保科 拓也 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80509399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キャパシター / エネルギー貯蔵 / イオン伝導体 / 蓄電 |
研究実績の概要 |
本研究は、固体イオン伝導体の長距離イオン移動を分極の発生に利用した新しい固体イオンキャパシタを作製し、蓄電デバイスとしての可能性を明らかにすることを目的としている。昨年度までは、固体イオン伝導体として知られているリチウムランタンジルコネート(LLZ)を試料として、固体イオンキャパシタの原理確認を行った。可能性は確認されたものの、LLZの高い焼結温度、高コストのランタンの使用、比重の大きなニッケル電極の使用などが問題でLLZキャパシタをそのまま実用化するのは困難であることが確認された。 そこで、本年度は実用化を考えたうえでの材料選択を行った。まず、イオン伝導体であるが低価格のリチウムボレートガラスを選択し、電極材料としてカーボンを選択した。この2つの材料を交互積層してキャパシタを形成する必要があるが、従来までの高温焼成胞により両者を共焼成することは不可能である。そこで、水熱条件下で圧力を印可し焼結を促進する水熱プレス法を採用した。実験条件を変えて両者の積層構造の作製を試みた結果、十分な密度が得られることが明らかとなった。緻密化を図るうえで最も有効であったのは、水熱反応を行った後、プレス機内部の水蒸気圧を低くすることで材料中への水滴の残留を抑える工夫をした点である。積層構造を作ることにより、実効的な電極面積が増えて固体イオン伝導体の厚みも減少するため、リチウムボレートガラスの低い導電性を十分カバーできることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リチウムランタンジルコネート(LLZ)からリチウムボレートガラスに材料を変えたのは、当初からの計画どおりである。LLZを使う場合電極は必然的にニッケルになる。ランタンおよびニッケルの使用は、実用化を考えるうえでコスト的な負担となる。また、LLZとニッケルで積層構造を作るには、高温での共焼成が必要となる。このときに焼成収縮によるクラックの発生が非常に大きな問題となる。もしも、リチウムボレートガラスをイオン伝導体としカーボンを電極に使用することができれば、それらの問題点は全て瞬時に解決することができる。しかしながら、両者をどのような方法で一体化し緻密化するかという別の問題が生じる。本年度の研究により、水熱焼結法で可能なことが見いだされた。この成果は本研究を実用レベルに近づけるうえで非常に重要であった。計画おおむね順調に進展しているが、この点に関しては画期的な進歩があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究により、リチウムランタンジルコネート(LLZ)を用いて固体イオンキャパシタとしての原理確認は終了した。さらに、実用化を図るうえでの固体イオン伝導体としてリチウムボレートガラス、電極材料としてカーボンを選択し、両者を積層緻密化するプロセスとして水熱焼結法を開発した。残りの期間は、キャパシタの製造条件を最適化し固体イオンキャパシタ作り上げることが目的となる。リチウムボレートカラスの組成についての検討はこれから課題である。組成を広い範囲で変化させて固体イオンキャパシタに最適な組成を見出す予定である。また、リチウムボレートガラスをマイクロメートルレベルで薄層化しカーボンと積層するプロセスについても検討する必要がある。すでに、プロセスの選択は終えているので、今後は積層条件を精密化する。
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