研究課題/領域番号 |
16H02398
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70255595)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 自己組織化 / 自己集合 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、数十nmスケールのナノ結晶の矩形ブロックの形状と表面特性をデザインし、集積環境を整えることでナノブロックを任意な結晶方位で1次元・2次元・3次元に配列させ、マクロスケールの多様な階層的構造体を構築し、構造由来の特異な機能を発現させることを目的としている。現状では、多様な結晶ブロックを合成し、任意な方位と次元をもつ配列体や異種化合物のブロックによる複合配列体を構築し、さまざまな機能の評価をおこなっている。また、ナノブロック配列体の手本としてのバイオミネラルの構造と機能の解析、および結晶成長手法によるナノブロック構造体の構築も並行しており、これらを通じて、メソレベルで構造化された高機能セラミックスおよび複合材料の新規合成手法を提供することを目指している。 平成29年度では、28年度に引き続き、多様な物質系のナノブロックのデザインと配列構造の作製、配列手法の発展、ナノブロック配列体の機能評価をおこなった。ここでは主要な3つの成果を示す。第1には、ライブラリー化された多種類のナノブロックを活用した異種ブロックの積層による複合メソクリスタルの構築である。条件の最適化によって、酸化マンガン・酸化セリウム・チタン酸バリウム・二酸化チタン・白金などの異種化合物を数十nmスケールで任意に積層した構造体や、複数のナノブロックがモザイク状に配列した構造体の構築を実現した。第2には、ナノブロックの積層体のマクロスケールな構築と機能評価である。ここでは、サマリウムドープ二酸化セリウムのナノキューブの配列によるフィルム作製と、その酸化物イオン伝導度の測定に成功し、優れた特性を確認した。第3には、バイオミネラル類似の炭酸カルシウム系ナノブロックの基板上への配向配列である。積層環境の最適化と変調によって、ナノロッドが方位を変えながら積層された貝殻の交差板構造類似のフィルムの構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、ライブラリー化された多種類のナノブロックを活用した任意な方位と次元をもつ配列体や異種ブロックの積層による複合配列体の構築とその構造に由来した機能の開拓を目指している。平成29年度の主要成果の第1として、条件の最適化によって、酸化マンガン・酸化セリウム・チタン酸バリウム・二酸化チタン・白金などの異種化合物を数十nmスケールで任意に積層した構造体や、複数のナノブロックがモザイク状に配列した構造体の構築を実現した。これは、多様なナノブロックを任意に配列した構造体を構築するためのベースとなる手法を提供するものである。主要成果の第2として、サマリウムドープ二酸化セリウムのナノキューブの配列によるフィルムを作製し、その酸化物イオン伝導度の測定に成功した。これは、ナノブロック配列体特有の機能を開拓するきっかけとなる知見である。さらに、マイクロメートルスケールの溝構造を用いたナノブロック配列体の方位の制御など、新規な配列手法の開発にも成功している。これらの結果は、本研究の最終目的に向けた年次目標に対して十分な成果が得られていることを示しており、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、平成28-29年度の成果をベースとしながら、ナノブロックの配向配列構造のスケールアップ・高度化と機能開拓を目指して、主に次の2つの目標に向けて研究を進める。第1には、上記の交互配列手法と多種類のナノブロックを活用したブロックの積層による配列構造の機能の評価である。ここでは、酸化マンガン・酸化セリウム・チタン酸バリウム・酸化鉄・二酸化チタン・白金・炭酸カルシウムなどの単独および異種の化合物のナノブロックを数十nmスケールで任意に積層した構造体を用いて、マルチフェロイック特性・光触媒特性・イオン伝導特性・機械的強度などを評価し、これらのナノ構造に由来する特異な性質を明らかにする。第2には、機能評価に向けた、ナノブロックの積層体のスケールアップと配向構造の高度化である。特に、強磁場の印可による広範囲の配列構造の制御と機能開拓へのアプローチを試みる予定である。また、ナノブロック配列体の手本としてのバイオミネラルのナノ構造と機能の解析、および結晶成長手法になるナノブロック構造体の構築も並行しておこない、ナノブロック配列によるバイオミネラルのナノ構造の模倣や特性の獲得などにも着目する。ここでは、貝殻や歯のエナメル質における交差構造に着目して機械的特性の評価をおこなうとともに、それらの類似構造体の構築を試みる。これらの成果を総合して、ナノブロックの集積による新たな機能材料の可能性を探索する。
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