研究課題/領域番号 |
16H02400
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
石崎 貴裕 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50397486)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 表面・界面物性 / 吸着水 / 吸着構造 / 水の動的制御 / 濡れ性 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,以下の2項目に関する研究開発を行った。 (1)様々な濡れ性挙動を示す表面形成技術の確立およびその表面における濡れ挙動の評価 平滑なシリカ表面への有機分子膜処理を実施し,低ヒステリシス表面の形成を試みた。原料には,枝状構造のTris(trimethylsiloxy)silylmethyltriethoxysilane (TTSES: ((CH3)3OSi)3Si(CH2)Si(OC2H5)3)と直鎖構造のDodecyltrimethoxysilan (DDS: CH3(CH2)11Si(OCH3)3)および Octadecyltri-methoxysilane (ODS: CH3(CH2)17Si(OCH3)3)を用い,これらの原料を所定の比率になるように調整した。ヘキサン溶媒中に所定のモル濃度になるように有機原料を入れ攪拌を行った。この溶液に洗浄した基材を各所定時間浸漬し,有機分子膜処理を行った。有機分子被覆表面の静的接触角は,混合した分子種に関わらず100~110°の値を示した。一方,接触角ヒステリシスの値は,混合比や分子種に依存して変化し,TTSESとDDSの混合表面では最小値の4.8°を示した。これは,TTSES分子がナノスペーサーとして機能し,DDS分子の運動性が向上した結果,Liquid-Likeな表面が形成されたためと推察される。また,超はっ水表面を形成するための技術開発も行った。 (2)モデル表面における吸着水の構造の解明 上述したモデル表面における吸着水の構造を調べるために,ラマン分光やFT-IRを用いて,水の水素結合に関連する3000~3600 cm-1のピークを中心に調査した。その結果,このブロードなバンドが自由水と結合水に起因するピークに波形分離可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究項目である(1)様々な濡れ性挙動を示す表面形成技術の確立およびその表面における濡れ挙動の評価,および(2)モデル表面における吸着水の構造の解明に関する研究開発を行い,低ヒステリシス表面を形成するための皮膜形成条件の一部を確立すると共に,これらのモデル表面での吸着水の構造を解明することに成功したため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も,H28年度に引き続き,(1)様々な濡れ性挙動を示す表面形成技術の確立およびその表面における濡れ挙動の評価,および(2)モデル表面における吸着水の構造の解明に関する研究開発を中心に行う。(1)様々な濡れ性挙動を示す表面形成技術の確立およびその表面における濡れ挙動の評価では,平成28年度の結果に基づき,有機分子を用いた低ヒステリシス表面形成技術の開発とその表面特性の評価に関する研究を行う。特に,成膜条件と表面特性の関連性を中心に調査する。また,無機材料(セラミックス等)を用いたはっ水・超はっ水表面の形成技術の開発に関する研究も行う。(2)モデル表面における吸着水の構造の解明では,平成28年度に得られたスペクトルの物理化学的な解釈を明らかにするために,量子化学的手法を用いた構造・振動解析を試みる。また,SPMを用いた吸着水の構造の可視化も試みる。
|