研究課題/領域番号 |
16H02409
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 一樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00210170)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 反応・分離・精製 / シリコン / フラックス / 凝固精製 / 合金化 |
研究実績の概要 |
Si-Sn-Cu 系融液中のB の熱力学的性質の測定について引き続き行ったが、Si-Bi系についてはSiの溶解度が非常に小さかったため、Si-Ni系に変えて行った。その結果、10mass%程度のNiの濃度でBの活量係数は2桁大きくなり、Cuに代わる溶媒元素として有望であることが明らかとなった。なお、本研究では当初予定通りSi-Sn-Cu系で次年度も溶媒組成の最適化を行うこととした。また、同合金のフラックス処理を念頭に置いたCaO-Na2O-SiO2 系のB吸収能の測定についても引き続き1473K 、1573K、1673KにおいてCBO3-および分配比の測定を行った。 Na2O-SiO2系フラックスによるSi-Na 系融体からの脱P挙動の解明を行った。1273Kから1473Kまで温度の影響について調査を行う計画であったが、Naの蒸発による困難を伴い1373Kでの実験を中心に行った。Na-Si合金中のPはP3-の形態でNa2O-SiO2系スラグ中に還元除去され、同スラグ中へのリン化物の吸収能であるフォスファイドキャパシティーCp3-は温度の増加に伴い大きく増加し、Na2O濃度の増加でフラックスの塩基度が上昇し、Cp3-が増加し、還元脱リンの促進が確認された。 しかし、本研究で得られたリン分配比Lpは最大0.22であり、過去に1723Kで得たCaO-CaF2系フラックスでの値より低く、平成30年度はCaO-SiO2系およびS-Ca系に変更して行うこととした。 なお、フラックス精製後のSi-Na合金からSi再結晶(凝固精製)を行った結果、最大97.4%の脱P率が得られ、酸浸出を併用した場合には最大95.6%の脱P率が得られ、Na2O-SiO2系フラックスを用いた場合でも他プロセスと組み合わせで、効果的な脱Pが可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、Si-Na系合金について得られた熱力学データを元に溶融シリコン合金の精製実験を真空設備のセットアップとともに行う予定であったが、試料採取の実験が非常に困難であり予定が遅れ、また系をさらにSi-Ca系へと変えたため少し遅れが生じ計画変更を行った。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅱa'.CaO-SiO2系フラックスによるSi-Ca系融体からの脱P、脱B挙動の解明 平成29年度はNa2O-SiO2系フラックスによるSi-Na系融体からの脱P挙動の解明を試みたが、懸念されたNaの蒸発により安定したデータ収集や実験そのものが困難を極め、フラックスをCaO-SiO2系に、合金系をSi-Ca系にして平成30年度は行うこととした。平成28年度に確立した手法で、1273Kから実験温度を上げ、1473Kまで温度の影響について調査を行う。また、酸化反応の原理的には期待できないが、後述Ⅲでの酸リーチング処理で除去される可能性も高い(NEDO受託研究「太陽電池用シリコンの革新的プロセス研究開発」(2010~2012年度)成果報告)ため、併せてBの挙動についても確認する。 Ⅱb'.Si-Ca系融体中PおよびBの熱力学的性質の評価 平成29年度はSi-Na系融体中PおよびBの熱力学的性質の評価を試みたが、上述のようにフラックスをCaO系に合金系をSi-Ca系にしたため、同合金の熱力学評価を行う。モデルによる評価を行い、フラックス中CaOのデータを用いて、フラックス-融体界面の酸素分圧を推算し、上記Ⅱa'のフラックスのPの吸収能およびBの吸収能を1273~1473Kで求める。 Ⅲ.析出Siの分離方法確立と酸リーチング処理を組み合わせた総合的精製効果の評価 平成28年度行ったSi-Cu系および平成29年度行ったSi-Na系、平成30年度行うSi-Ca系融体からのSiの凝固析出については、過去の知見(文献18、31、39、41、48)を参考にし、急温度勾配下、低凝固速度で行い、Si回収時の酸洗浄(リーチング)効果も併せてオーバーオールでのBおよびPの除去挙動について評価を行う。 以上を総括し、本研究課題である太陽電池級シリコンの合金化フラックス処理による革新的精製プロセスについて、最適な溶媒組成、フラックス組成、プロセス条件の評価を行う。
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