研究課題/領域番号 |
16H02410
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野平 俊之 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (00303876)
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研究分担者 |
安田 幸司 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20533665)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 溶融塩 / 電解還元 / シリコン / 液体合金カソード |
研究実績の概要 |
1.溶融CaCl2中における液体合金カソード上でのシリカ電解還元のメカニズム解明 平成29年度までの研究により、溶融CaCl2中における液体Znカソード上でSiO2の電解還元においては、「直接電解還元」と「電解生成したCa-Zn合金による間接還元」の二つのメカニズムが存在することが明らかになっていた。また、トータルとして還元速度を向上させるためには、その両者が進行する0.6 V (vs. Ca2+/Ca)付近の電位が有望であることも明らかになっていた。以上を踏まえ、平成30年度は、より効率的な電極構造として、アルミナ製タンマン管中にSiO2棒を複数束ねたものを浸漬した形状の電極を使用した。これにより、三相界面の増大による直接電解還元速度の向上およびCa-Zn合金による間接還元速度の向上が達成された。今後は、生成するSi中のCa不純物濃度を考慮した最適電解条件を探索する必要がある。 2.液体合金からのシリコン析出反応の基礎データ取得と最適化 前年度に引き続き、種々の条件で液体Zn-Si合金からのSi析出実験を行った。平成30年度は、種結晶として多結晶Si棒を使用して、析出Siを効率的に回収することを検討した。まず、金属級Siを原料として1123 KでSi飽和の液体Si-Zn合金を準備した。その中に多結晶Si棒を浸漬させて、773 Kまで降温し、固体Siを析出させた。その結果、多結晶Si棒付近に多数のSi結晶の析出が確認されたが、エピタキシャル成長ではないためにZnの巻込みが多かった。今後は、単結晶Si板などを使用してエピタキシャル成長や面方位により成長形態・速度の違いを検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1.溶融CaCl2中における液体合金カソード上でのシリカ電解還元のメカニズム解明」については、これまでよりも効率的な電極構造を開発した。また、「2.液体合金からのシリコン析出反応の基礎データ取得と最適化」については、種結晶を用いることで、目的とする場所にSiを析出可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
1.溶融CaCl2中における液体合金カソード上でのシリカ電解還元のメカニズム解明 H30年度までの研究により、溶融CaCl2中における液体Znカソード上でのSiO2の電解還元においては、「直接電解還元」と「電解生成したCa-Zn合金による間接還元」の二つのメカニズムが存在すること、還元速度を向上させるためには0.6 V (vs. Ca2+/Ca)付近の電位が有望であることが明らかになった。また、より効率的な電極構造としてSiO2棒を複数束ねたものを浸漬した形状が有効であることが分かった。本年度は、還元速度とCa不純物混入のトレードオフ関係を調べ、最適な電解条件(電位、電流密度)を見出す。特にCa-Zn合金中のCa活量を熱力学計算および実験の両面から求め、Si中へのCa不純物混入のメカニズムとその防止策を検討する。 2.液体合金からのシリコン析出反応の基礎データ取得と最適化 H30年度までの研究により、液体Zn-Si合金からのSi析出の際に、降温速度が小さいほど得られるSi粒が大きくなり、Si粒が大きいほど不純物が少ないことが明らかとなった。また、種結晶として多結晶Si棒を用いると、その上にSiが優先的に析出することも分かった。ただし、析出物中にZnの巻込みが多いことが課題であった。以上を踏まえ、本年度は、種結晶として単結晶Si板を用い、エピタキシャル成長させることでZn巻込みの大幅な低減を図る。具体的には、(100)面と(111)面の単結晶Si板を種結晶として、液体Zn-Si合金からSiを析出させる。試料を電子顕微鏡やX線回折などで分析することでエピタキシャル成長を確認し、ICP-AESで分析することでZn不純物量を明らかにする。さらに、より実用的なSi回収法として、基板となる種結晶付近をガス冷却することを検討する。以上より、連続的かつ効率的な回収法の提案を目指す。
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