研究課題/領域番号 |
16H02413
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
神谷 秀博 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183783)
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研究分担者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
飯島 志行 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 講師 (70513745)
岡田 洋平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80749268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ材料 / ナノ界面設計 / 凝集・分散 / 塗布・乾燥 / ナノ複合体 |
研究実績の概要 |
高濃度に分散したナノ粒子をナノ流体、及びナノ流体からナノ構造体を得るためのナノ粒子界面分子構造設計法のため、ナノ粒子表面に分子構造設計した有機分子を結合・吸着させるためのナノ粒子界面構造設計方として、既往の研究において、様々な有機溶媒、高分子に分散可能な界面活性剤の構造を可能な限り低分子量化することにより、表面に形成する有機層厚みを薄くする手法を試みた。基本構造として、アルキル鎖とPEG鎖の直鎖状の構造を対象とした。また、無極性溶媒、ポリマーへの高濃度分散を目的にオレイル基を基本に、分子量の低減を試みた。その結果、PEG鎖は炭素数3個、アルキル鎖は、炭素数10個の単純な直鎖状の構造で万能分散性が維持されることを確認した。今年度は、使用するナノ粒子材質は、TiO2、銀を用い、吸着基を、PO4, NH2基に変えることで、粒子材質を変えても上記の最適構造が粒子表面に形成できることを確認し、様々な有機溶媒への分賛性を確認した。粒子濃度の増加のため、アルキル直鎖をベンゼン環に変えた分散剤を合成を行い、成功した。粒子高濃度化への分散剤構造設計の指標が確立された。 また、得られた万能分散性を有するTiO2ナノ粒子を用い、PMMAへの高濃度分散を試みた。その結果、20vol%までの体積濃度で、ナノ粒子が分散した透明無着色のポリマー複合体が得られた。既往の研究では、ポリマー複合体の黄色の着色が問題であったが、生成させた界面活性剤の精製を徹底し、不純物を除去した高純度の界面活性剤化することで、着色が防止でき、可視光域で吸収のない、無職で高い透過率を有する複合体の合成に成功した。一層の厚膜化を実現するため、モノマーをTiO2トルエン分散液に添加し、重合開始剤により光重合する方法でも透明複合体を得た。従来の界面活性剤では、生成するポリマーが変形したが、新規分散剤では透明な重合体が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子の分散・凝集性の制御に必要な、界面活性剤の分子構造の設計法の確立に成功し、粒子材質を変えても、吸着基の構造を制御すれば、所望の分散剤分子構造が、粒子表面に形成できる手法を確立した点は、ナノ粒子の分散設計が自由自在にできる可能性を開拓した点で大きい。また、得られた分散性ナノ粒子を用いて、PMMAなどのポリマーへの複合化を試みたところ、合成した分散剤を、高純度で、不純物を除去した分散剤に精製することで、従来の分散剤で発生した、黄色などの着色現象や、モノマーからポリマー重合過程で生じたポリマーの不規則変形が防止できることを確認した。この結果は、分散性ナノ粒子の、材料素材への応用可能性を切り開くものである。また、目標である粒子濃度の高濃度化についても、分散剤の構造を、従来の直鎖型のものからベンゼン環を使用することで、吸着構造を平面化することで、粒子間距離を短くできることを示唆できており、今後、高濃度のナノ流体を得る、指標が得られた。粒子表面間力評価システムも導入でき、順調に表面間相互作用の測定にも成功した。塗布・乾燥体のTEM観察による乾燥膜内の粒子表面間距離の計測法も確立しつつあり、今後の粒子界面構造の設計による分散・凝集挙動の変化と、粒子間相互作用の関係の解析にも適用の見通しが立っている。分散剤の吸着基と粒子材質の組み合わせによる、粒子表面への有機鎖の吸着力についても、実験的に確認する手法も確立できており、粒子表面間相互作用と界面分子構造の関係も体系的に検討できる素地ができた。以上の点から、当初計画した内容が概ね順調に進展できていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ粒子の分散剤の分子構造設計法を確立できたので、ナノ粒子表面に吸着させる分散剤の構造を直鎖状から、ベンゼン環を利用した、平面状に吸着できる構造に設計することで、分散剤の吸着による表面吸着層の厚みを極限まで薄くし、ナノ粒子の固体部分の直接接触を防ぐことで、粒子濃度の高濃度化を実現する。直鎖型の分散剤は、分子量を分散作用が維持できる極限の分子量まで小さくしても、嵩高い構造になるため、溶媒が吸着層の中に浸入、取り込まれるため、液体量を増やす必要がある。平面型構造の界面活性剤の合成に成功したことから、粒子表面間距離を極限まで短くした高濃度ナノ流体が得られる可能性が高まった。 このナノ流体を用い、今後は、塗布、乾燥による高濃度ナノ粒子積層膜、モノマー重合等も組み合わせた分散性ナノ粒子のポリマーへの分散によるナノ粒子高濃度複合化樹脂の合成を行い、高機能材料化を行う。 また、今年度、共同研究内容の打合せを実施したケルン大学のS. Mathur教授との共同研究を、大学院生の相互派遣により実施し、今年度、万能分散性が確認された有機分子構造を、様々な材質の機能性ナノ粒子のin-situ合成法で、粒子表面に析出させ、今年度実施した、TiO2, 銀以外の材質のナノ粒子でも、様々な有機溶媒や樹脂への万能分散性を確認し、様々な量子効果等を有する機能性ポリマー等への応用展開を実現する。 ナノ粒子間相互作用の界面構造設計による変化の解析は、原子間力顕微鏡を利用した方法とともに、ナノ粒子の配列構造のTEM観察の画像解析なども通じ、体系的検討を試みる。
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