研究課題
太陽エネルギーを用いて水を分解し水素と酸素を生成する反応は、人工光合成のもっとも単純な例と考えられるが、実際に高効率で大規模に展開できる反応系はまだ開発されていない。研究代表者はこれまで水を分解できる種々の半導体光触媒系の開発を行ってきたが、最近この様な光触媒微粒子を導電性をもつ金属（あるいは炭素や導電性酸化物）等で平面状に固定化した「光触媒シート」を作製すると、効率が飛躍的に向上することを見出した。現状で太陽エネルギーから水素エネルギーへの変換効率(STH)はほぼ1%であるが、本研究課題により、STHが5%を実現できる「光触媒シート」の開発を行うとともに、「光触媒シート」の作動原理を厳密に解明することにより、人工光合成の大規模実現に向けて確固たる学術的指針を確立することを目的とする。平成29年度は「光触媒シート」作動原理解明および太陽エネルギー変換効率向上を目指し、主として下記の課題に取り組んだ。水素生成光触媒の価電子帯正孔と酸素生成光触媒の伝導帯電子を結びつける役目をするコンタクト層は両者とオーミックな接合をしていることが理想的と考えられるが、現実にそのような接合を形成するのは不可能である。そこで、種々の界面形成方法の検討と併せて、個々の光触媒だけを固定化したシートを用いて電気化学的な検討を行ったところ、シート作製前に光触媒粒子に表面修飾を施す事が有効であると見出した。その結果、水素生成用光触媒、酸素生成用光触媒共に、波長600 nmまでの光を利用可能な光触媒材料を用いた光触媒シートを作製し、可視光照射下で酸素および水素の同時生成を確認するに至った。
2: おおむね順調に進展している
本課題はおおむね順調に進捗している。光触媒微粒子自体の改良に加え、種々のコンタクト層や表面修飾等の検討によって、従来の光触媒シートに用いていた材料系よりも長波長応答可能な材料系を用いて、水素および酸素の同時生成が確認できる系を構築するに至っている。また、電気化学的評価等も併せて、コンタクト層界面との知見も着実に得られてきており、今後、界面制御や表面修飾、光触媒シートの作製プロセス等を詳細に検討することによって、「光触媒シート」の作動原理解明および太陽エネルギー変換効率向上を達成できるものと期待できる。
光触媒調製法や組成制御等も含めた個々の光触媒微粒子自体の高品質化を図るとともに、コンタクト層の材料選択や構築方法、表面修飾等も含め、光触媒シート作製プロセスの検討を継続して行う。これらの検討を通じて、エネルギー変換効率5%を実現できる長波長応答型の光触媒シートの構築を目指し、さらにその作動原理の確立を、当初の研究計画に則って実施する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 1件、 査読あり 14件) 学会発表 (56件) (うち国際学会 18件、 招待講演 18件)
ACS Catalysis
巻: 8 ページ: 1690～1696
10.1021/acscatal.7b03884
Joule
巻: 2 ページ: 509～520
10.1016/j.joule.2017.12.009
ChemPhotoChem
巻: 2 ページ: 234～239
10.1002/cptc.201700136
Part. Part. Syst. Charact.
巻: 35 ページ: 1700275～1700275
10.1002/ppsc.201700275
巻: 1 ページ: 167～172
10.1002/cptc.201600015
Faraday Discuss.
巻: 197 ページ: 491-504
10.1039/C6FD00184J
Chem. Phys. Lett.
巻: 683 ページ: 140～144
10.1016/j.cplett.2017.03.012
巻: 1 ページ: 265～272
10.1002/cptc.201700005
J. Mater. Chem. A
巻: 5 ページ: 6106-6112
10.1039/C7TA00487G
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 56 ページ: 4739～4743
10.1002/anie.201700117
巻: 5 ページ: 13154-13160
10.1039/C7TA03761A
巻: 5 ページ: 21242-21248
10.1039/C7TA06663E
Chem. Commun.
巻: 53 ページ: 11674-11677
10.1039/C7CC06637F
J. Phys. Chem. Lett.
巻: 8 ページ: 5712～5717
10.1021/acs.jpclett.7b02526
