研究課題/領域番号 |
16H02419
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 康行 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00235128)
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研究分担者 |
伊藤 大知 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (50447421)
太田 誠一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40723284)
國土 典宏 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 理事長 (00205361)
稲垣 奈都子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (00611419)
宮島 篤 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任教授 (50135232)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体医工学 / 再生医療 / 内分泌 / ハイドロゲル / 移植 / 血流 |
研究実績の概要 |
ゼラチンメタクリレートとヒドロシキエチルメタクリレートの共重合体ゲルからなるハイドロゲルマイクロウエルの開発に成功し、この上にマウスインスリノーマであるMin6m9を凝集化しスフィロイドへと組織化・固定化することに成功した。さらにPDMSで作製したデバイスシェルの内部に、ハイドロゲルマイクロウエルと血液灌流路となるコラーゲンチューブを,ゼラチン・トランスグルタミナーゼゲルの接着剤兼スキャフォールドを用いて一体化することで,血流通過が可能なハイドロゲルデイバスの開発を達成した。このデバイスについて,まずはex vivoの血流導入実験を実施すると共に、さらにラット腹腔の大静脈に端々吻合を改良した方法に移植し、短時間であるが血流導入と灌流に成功した。Min6m9細胞の固定化方法については,パターン化ハイドロゲル法と平行して,生体吸収性ポリマーであるポリ乳酸の多孔質担体や,酸素透過性ポリマーであるPDMSの多孔質体を用いた三次元培養や,それを羅らにカラムに詰めることで灌流培養をも行った.両者とも,Min6m9細胞は内部で増殖・三次元的凝集を示し,良好な高グルコース濃度刺激時のインスリン産生能を示した.特にPDMS担体を用い,その担体の一方向を酸素透過膜を介してガスが連続的に供給可能とする培養方法においては通常の三次元培養と比較して,高い増殖とインスリン産生能が得られたことから,デバイスに外部から直接酸素を供給可能とすることのメリットが示された.また,ヒトiPS細胞からの膵島分化については,大量の細胞を得るための旋回培養を用いた凝集体直接分化誘導を確立し,ヒト膵島と比較すると,インスリン産生能は劣るものの,デバイスに十分な量のiPS由来膵島を調製する見通しを立てることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パターン化ハイドロゲルでMin6m9細胞の凝集体を効率よく形成させ,移植可能はハイドロゲルデバイス上で、Min6m9細胞スフィロイドを構築することに初めて成功した。さらにゼラチン・トランスグルタミナーゼによるハイドロゲル接着,コラーゲンチューブによるデバイス出入り口の血管様デバイスの作製,PDMS製のシェル等を適切に組み合わせることで,移植デバイスの構築に成功し,短期間であるが,in vivoでの血流導入移植を行うことに成功した.また,ハイドロゲル以外の固定化担体の可能性や,iPS細胞由来の膵島の利用にも目処を立てることができた.最終的な目標の実験である,デバイスの血流導入移植まで実施したために,おおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
血流導入移植実験実施時の課題として、縫合時に破断しない十分な機械的強度を有する血管内皮下チューブの作製、移植時の止血、また細胞を保持したデバイスがin vivo移植時にインスリン分泌能を示すことが課題として挙げられる.移植については,引き続き手術手技,デバイス出入り口の血管材質とデバイスへのセットアップ,持続型ヘパリン製剤の利用等の改善を進めることで,止血と血栓抑制のバランスを取ながら、灌流時間の延長を試み,さらに移植膵島の機能評価を行う.膵島機能の検証は、血流導入移植の前検討として、作製したデバイスの一部を肝臓表面に移植することによっても実施し、血流導入移植の難しさと、デバイス性能評価の難しさを切り分けることで、研究をスムーズに進捗させる.現状の移植デバイスの可能膵島移植量は、ラットの必要量の1/20に留まっているために、これを増加させる試みも実施する.移植実験においては,血液凝固反応・免疫反応・炎症反応等が同時に起きていると考えられるので,これらの解析を進め,安定した移植法およびデバイス設計製作に適切にフィードバックすることも試みる.
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