研究課題/領域番号 |
16H02424
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小笠原 俊夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20344244)
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研究分担者 |
横関 智弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50399549)
後藤 晃哉 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (10570864)
高橋 辰宏 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (60344818)
平野 義鎭 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (90425786)
石田 雄一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (20371114)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 複合材料 / 航空機 / 雷撃 / 損傷 / 電気伝導度 / 損傷解析 |
研究実績の概要 |
高い導電性と力学特性が得られる樹脂組成として、導電性高分子・ポリアニリン(PANI)とドーパント・ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、硬化ポリマー・ジビニルベンゼン(DVB)の組み合わせについて、硬化プロセスの最適化を行い、導電性、成形性、強度特性の両立を図る実験的検討を実施した。PANIとDBSAの事前加熱ドーピング処理を施すことで、樹脂単体で高い導電性と強度特性を両立することを見出した。また、CFRP成形の際に、検討した最適加熱プロセス適用することで、面外導電率 1[S/cm]以上、曲げ強度400[MPa]以上となるCFRPが得られた。更にPANIに対して種々のドーパント(エチルへキシルフォスフェート(EHP)/p-トルエンスルホン酸(PTSA)混合物、アクリレート基含有ドーパント(AOP))を用いることで導電性、成形性、機械特性を制御できることも見出した。 CNT分散系CFRPとしては、垂直配向MW-CNTアレイと、これを水平方向に引き出すことによって得られる配向CNTシートを、樹脂リッチ層を有する航空機用CFRPの層間に挿入することによって、CFRPの面外導電率を0.001~0.1 [S/cm] の範囲で制御できることを実証した。 試作したPANI系CFRPおよびエポキシ系CFRPに対して、インパルス電流試験装置を用いた模擬電撃試験を実施し、電撃損傷特性を評価した。その結果、エポキシ系CFRP と比較して、PANI系CFRPにおいて損傷が大きく低減することが実証された。有限要素法(FEM)による熱・電気連成解析、熱応力解析等により、電撃荷重が負荷されたCFRP積層板の電撃損傷挙動に関する数値シミュレーションを実施した。その結果、厚さ方向の導電率が0.001から0.1 [S/cm] まで高くなると電撃による層間はく離離面積は50~60%まで低減できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高い導電性と力学的特性を両立するCFRPを得るための方策として、導電性高分子を用いており、ドーパントの最適化、硬化ポリマーの最適化、混合・成形プロセスの最適化により、目的を達成するための研究を進めている。今年度は高い導電性が得られる組み合わせとしてPANI・DBSA・DVB混合樹脂を用いて、混合・成形プロセスの最適化により、従来性能(面外導電率:0.7[S/cm]、曲げ強度:250[MPa]程度)を凌駕する性能が得られている。エポキシ系のCFRPと同等の力学特性(曲げ強度:500[MPa]以上)を目指して研究を進める上で、十分な予備検討結果が得られている。また、PANI/EHP/PTSA/DVBからなる樹脂は、従来樹脂と比較して高い導電性(0.5S/cm)と長い保存安定性(-20℃、2週間以上)、可使時間(30℃、3時間)を有することを見いだしている。CNT分散系CFRPについても厚さ方向の導電性を3桁にわたって可能であることが実証されている。以上のことから、導電性制御CFRPについては順調に研究が進んでいるといえる。 また、CFRPの電撃損傷評価試験と数値解析に関しては、樹脂の熱分解挙動を数値解析において考慮することによって、実験結果と計算結果が概ね対応している結果が得られており、評価・解析技術についても順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高導電性と高強度を両立するためには、加熱硬化中の脱ドーピングによる導電性低下を抑える必要がある。事前加熱処理により、脱ドーピングを抑えるだけでなく、ドーパントの変更・最適化を行うことでも制御が可能である。このため、次年度では、カンファースルホン酸(CSA)などのドーパントの使用・併用を行うことで、高導電性と高強度を両立する熱硬化型導電性高分子の開発を目指す。また、CNTやグラフェンといったカーボン系ナノ材料も高導電化と高強度化に有効であるため、導電性高分子との複合化についても検討を進める。更に塩酸などのより低分子量ドーパントと長鎖アルキルを有する高分子量ドーパントの混合、硬化反応としてカチオン重合とマイケル付加反応の併用、PANIとドーパントとの機械攪拌処理の最適化により、高導電性と良好な成形性、力学特性を両立する熱硬化型導電性樹脂の開発を目指す。 CNT分散系CFRPに関しては引き続き配向CNTシートを層間に挿入したCFRPの試作および評価を進める。適用するCNTの仕様とCFRPの導電率との関係について詳細なデータ取得を行うとともに、層間強度の向上についても検討する。更に、粉末状CNTの適用についても並行して検討する。CNTを分散した熱可塑性樹脂系CFRPのプリプレグおよび積層板を試作する。試作したCFRPに対して、電気伝導度、力学特性などの基礎特性の評価を進める。 試作したCFRP等に対してインパルス電流試験装置を用いた模擬雷撃試験を実施し、電気伝導度の異なるCFRPにおける電撃損傷過程の実験的な解明を進める。得られた実験結果に基づき、これを反映した損傷モデルを構築して、損傷解析手法の高度化を進める。CFRPの電気伝導度、熱分解特性などが、電撃損傷挙動に及ぼす影響について、数値解析に基づいた定量的な評価・解析も実施する。
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