研究課題/領域番号 |
16H02428
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
巻 俊宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50505451)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | AUV / 自律型海中ロボット / 海底ステーション / 海底地震津波観測 |
研究実績の概要 |
新たな海底観測手段として注目されている海底センサネットワークを拠点とする、AUV(自律型海中ロボット)の無人・長期・広域展開手法を提案し、海底環境の長期間、広範囲かつ密なモニタリングを行うための技術基盤を構築する。新開発する広域ナビゲーション手法により、音響測位範囲より遠く離れた海底観測ノード間のAUV の自律移動を実現、これまでに開発したドッキング手法の発展により、ノードへのAUV の自動ドッキング、充電および高速データ通信を実現する。本手法は現在常識となっている船舶ベースの海洋調査を根本から変える可能性を秘めており、サイエンス分野のほか、資源開発、漁業、施設管理、捜索救助など幅広い応用が期待される。 本年度は実験用プラットフォームとして、AUV Tri-TON 2ならびに海底ステーションA型の整備を進めた。昨年度に実施した海域試験の結果を踏まえ、システムの安定性向上に資する電気的、および機械的な改造を実施した。 AUVがステーション間を移動するためのインターノードナビゲーション手法の実証試験を鹿児島湾にて実施した。水深約200mの海底に海底ステーションを設置し、AUV Tri-TON 2を展開、自律制御によりステーション近傍から約800m離れた地点まで往復させた。また、AUVの絶対位置を外部の高精度音響測位装置でも計測した。本試験によって得られたデータにより、ステーションとの音響測位圏外へ移動する際のAUVの測位手法を提案するとともに、その有効性を評価した。また、本手法の応用によりAUVが海底に着底する手法についても検討し、海底重力探査への応用について検討した。 ドッキング手法についても、海底ステーションおよびTri-TON 2に必要な冶具を取り付け、水槽試験および海域試験を通して開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画についてはほぼ予定通りに進行している。それに加えて、提案手法の応用により、海底に着底し、AUVの測位基準となったり、海底重力計測を行うための新手法のフィージビリティを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間の研究により、提案手法の核となるローカルナビゲーション、インターノードナビゲーション、ドッキングの3手法についてそれぞれ水槽試験および浅海域試験における有効性が確認された。このため最終年度となる本年度はこれまでの結果をもとにより精度を向上し、かつセンサノイズに対してロバストにするためのデータ処理手法を検討するとともに、海域での総合試験を行う。 データ処理手法として、複数AUV間の音響測位に伴う信号をパッシブに受信することで、後処理によってAUV群全体としての測位精度を向上させる手法の検討を行う。 海域での試験は、6月に鹿児島湾、年度後半に沼津沖の海域にて実施を予定している。提案手法を実装した海底ステーションおよびAUVを展開し、SSBL(Super Short Base Line方式による音響測位装置。本研究では船舶に搭載する)による外部からの測位結果と比較することで、提案手法の性能を評価する。また、システム全体の小型、低コスト化による実用性向上を目指し、次世代型の音響測位通信装置の有効性を検討する。
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